分かったつもりにさせない! 金融・投資用語 AtoZ Vol.2 | 2018.01.31
金融商品の性格を知って、リスクを分散させよう
金融・投資用語AtoZ
“ポートフォリオの分散”
Text by

GOLD PRESS 編集部

GOLD PRESS Editors

 投資先を検討する場合は
 個別株式や債券だけでなく、
 もっと広い視野で考えましょう。

 さまざまな商品に分散して投資すればするほど、
 リスクは減っていくのですから。

 

投資に興味をもっているなら、「ポートフォリオ」という言葉を見聞きしたことがあるはずです。でも、ポートフォリオの意味がいまいちピンとこないと感じている人も多いのではないでしょうか?というのも、この言葉はとても多様な意味をもっているからです。

ポートフォリオ(portfolio)は、写真家やデザイナーのようなクリエイティブ職の人たちにとっては「作品集」という意味になります。教職に就いている方々にとっては、学習を総合的に評価するための手法として知られています。そして、投資・金融の分野でポートフォリオといえば、保有する金融資産の集合を意味するのです。

ポートフォリオの本来の意味が「携帯用の書類入れ」であることを考えると、作品集は「ひとつひとつの作品を集めたもの」、学習評価は「子どもたちの学習成果を書類としてまとめたもの」、投資では「持っている金融商品を組み合わせたもの」としてすんなり理解できるはずです。

投資を勉強していると、どうして「ポートフォリオ」という言葉によく出会うのでしょうか?今回は「ポートフォリオ」の重要性について解説します。

 

どんな書類をカバンに入れますか?

ポートフォリオは、「自分が保有している金融資産の集合」と定義できます。投資をしていくと、国内株式をいくらもっている、国債・社債はこれだけ、ETFと外国株式はこれくらいと、金融資産が多様化していきます。それをポートフォリオと呼ぶのです。

投資を始めた直後は、東証一部に上場しているIT企業・A社の株式を100万円分買って保有している、というポートフォリオもあり得るでしょう。カバンにA社という書類が1枚しか入っていない状態です。実はこれ、大変危険な状態です。というのも、A社の業績が悪化して株価が下がれば、元本割れを起こしてしまうからです。

では、100万円を2分割してA社とそのライバル企業B社の株式をそれぞれ50万円ずつ買ったとします。カバンにA社とB社という書類が2枚入っている状態ですね。実は、これも危険な状態なのです。

A社もB社も日本で情報通信業を営んでいるのですから、例えば情報通信を対象に新しい法規制が敷かれた結果、IT株式全体がマイナスの影響を受ける可能性があります。良い材料があれば業種全体の個別株式が底上げされることもありますが、リスクが分散されていないという点で危うい状態といえるのです。

では、どんな金融商品を組み合わせてポートフォリオを作ったらいいのでしょうか?理想的なのは「異なる性格・異なる値動きの複数の金融商品に分けて投資する」です。これに「異なる国・地域に投資先を分散させる」という考え方も取り入れましょう。

 

金融商品の性格って?

「異なる性格・異なる値動き」の金融商品を整理すると、次のようになります。なお、下でいう「流動性」は、その金融商品を簡単に換金できるかどうかを意味しています。流動性が高ければ換金が容易で、低ければ満期になるまでなかなか換金できない、ということになります。

株式は一攫千金を狙える金融商品で、当てたら素早く換金できます。でも、株価が下がったら目も当てられない状態になります。外貨は(通常、一定の手数料がかかりますが)簡単に換金できる一方で、通貨発行国の政治・経済の状況によって為替が大きく変動しますから、国際政治の情勢にも目を配っておく必要があります。

こうして見ていくと、どれも一長一短がある気がしますよね。その「一長」のメリットをしっかり享受しつつ、「一短」のリスクをなるべく減じるために、さまざまな金融商品に分散して投資する必要があるのです。これを「ポートフォリオの分散」といいます。


※図表をクリックすると拡大画像が表示されます

「攻め」と「守り」で分散

ポートフォリオの分散にはさまざまな考え方がありますが、正解はありません。試行錯誤しながら、自分でつくり上げていくものなのです。そこで、ひとつの考え方として有効なのが、投資を「攻め」と「守り」に分けることです。

「攻めの投資」は、リスクを取ってでも積極的に運用益を上げようとする考え方です。株式や外貨の短期売買がそれにあたるでしょう。大きな利益を上げる可能性もありますが、元本割れなどの損失が発生するリスクもあります。

「守りの投資」は、大きく増えなくてもいいからこの資産だけは着実に増やそうとする考え方です。その代表例が銀行預金ですよね。ただ、預金は利息が極めて低く、大規模な資産を預けていない限りそのメリットを受けることができません。

そこで、預金に代わる「守りの投資」として紹介したいのが「金(ゴールド)投資」です。金は万国共通で価値が認められている鉱物で、国際政治や経済の情勢が不安定なときには各国の通貨に代わって強さを発揮するともいわれます。

「ゴールド」というと尻込みしてしまいますが、純金積立投資は少額からでも始められます。また、一般的にはポートフォリオの5〜10%程度で金投資をしておくほうが良いとされています。金融資産を下支えする存在なのですね。

今回は「ポートフォリオの分散」についてご説明しました。「攻めの投資」と「守りの投資」、あなたはどんなポートフォリオを構築しますか?

V. まとめ

1 “ポートフォリオとは「保有する金融商品の集合」”
2 “ポートフォリオは「異なる性格・異なる値動きの、
 複数の金融商品で構築する」(ポートフォリオの分散)”

3 “攻めの投資だけでなく、守りの投資も考慮しよう”

文: 冨田秀継
Words: Hidetsugu Tomita

イラスト: 加藤豊
Illustration: Yutaka Kato

インフォグラフィック: 金田介寿
Infographics: Kaiju Kanada

キャラクターイラスト: キムラみのる
Character Illustration: Minoru Kimura