豊島さんに聞いてみた! 001 | 2018.03.29
投資は「草食系」で始めよう。
一度の飲み会代から始める投資
Text by

豊島逸夫×モリジュンヤ

Itsuo Toshima×Junya Mori

分かりやすいアドバイスに定評がある投資の専門家・豊島逸夫氏に、気鋭の若手編集者・モリジュンヤ氏が「投資の難しいこと」を分かりやすく聞いていく本連載。
第1回は、投資に関心はあるけれど、何から始めたらいいのか分からないという方に向けた、豊島さんからのアドバイスを紹介します。 投資によって得られるリターンは「お金を儲けることだけではない」と語る豊島さんに話を伺いました。

 

 

投資は焦って始めたら負け

 

 

――若い人や初心者から「投資を始めようか迷ってます」と相談されたら、豊島さんはどうアドバイスされますか?

まず、「焦って始めないように」と伝えますね。投資を始めようか迷うきっかけが、例えば、知人が株式で儲けたことが分かったからだとします。

――始めるきっかけとしては悪くないような気もしますが、そうではないと。

これまで投資に関心もなかったし、経験もなかった人が「乗り遅れてしまった」「何か始めたほうがいいのかも」という不安から、慌てて始めても何も良いことはありません。慌てていると、いきなり大金をつぎ込んだりしやすいですから。

――慌てて始めないように、まずは勉強などしたほうがいいのでしょうか?

これが難しいのですが、投資は勉強しても分からないんです。スイス銀行でトレーダーをしていた時期があるのですが、日本の銀行はマニュアルを覚えるのに対して、スイス銀行は徒弟制度。私の上司が、初日に「この1億円を1日運用してみろ」とかいってくるんですよ(笑)。

――初日に現場へ放り込まれて、1億円を運用するのを想像するだけで胃が痛いですね…。

その上司が教えてくれたのは、投資は「損した時にどれだけ精神的な落ち着きを維持できるか」が重要ということ。これは体で覚えていくしかないんです。理屈ではなくね。

――投資は体験しないと分からないけれど、慌てて始めるのは避けたほうがいい、と。

そうですね。だから、「じっくり始めること」が大事なんですよ。じっくりと始めれば、リスクも少ないし、いろんなことを学ぶことができます。

 

 

 

少額の投資は自己投資でもある

 

――投資を「じっくり始める」には、具体的にどうしたらいいのでしょうか?

私は「かけ湯」的に小さく始めることをおすすめしていますね。

――「かけ湯」ですか。

月3000~4000円で始められる積立投資というものが登場しています。貯金するような感覚で、株式や金(ゴールド)に投資していくことができるんです。このような少額から積立していく投資のことを「かけ湯」と表現しています。

――飲み会に1回参加するくらいの値段ですね。

そうなんです。だから、女性におすすめするときは「月に1回女子会を我慢して、節約したお金3000~4000円を投資にあててみませんか」とお伝えしたりしています。

――投資と聞くと、まとまったお金が必要なイメージがありますが、そうとも限らないんですね。

実は少額から始められるんですよ。だから、まずはコツコツとでもいいから始めてみる。いきなり、「熱いお湯=市場」に入るのではなく、「かけ湯=積立投資」をして体を温度に慣らしていくんです。

――コツコツと少額から始められるのであれば、投資のハードルは下がりそうですね。一方で、少額の投資では金銭的なリターンを生む、といったことは難しいように思います。

金銭的なリターン以上に、得るものがありますよ。人の欲求は不思議なもので、少額でも投資を行うと、損をしないようにと思っていろいろ調べるようになります。

――始めることで、視野が広がる。

例えば、月3000円でも投資を始めてみると、これまでワイドショーしか見ていなかった人が、急に国際ニュースを見始める。新聞の経済面も見るようになったりしますね。

――飲み会1回分の金額を投資することが、学ぶ習慣の獲得にもつながるということですね。

経済だけではなく、投資によって得られた国際的な感覚は、必ず役に立ちますよ。特に若い人にとって、転職した時、違う部署に異動した時、思わぬところで知識として活きてきます。もしかしたら、お金を儲けるよりも重要なことかもしれません。

――投資を始めることは、お金を儲けること以上の価値があると。

お金を儲けるのは、あくまで手段です。自分の目標を達成するためにお金が必要なのだから、何のために投資をするかをまず考えて欲しい。その上で、小さく実践してみて、少しずつ知識を蓄えることができたら、1年で見える景色が変わってきます。

――少額の投資は、自己投資にもつながるのですね。

人間は「儲けたい」という欲からは逃れられません。だから、欲のエネルギーを良い方向に向ける。欲のエネルギーを知識の獲得に向けられたなら、投資が勉強につながるわけです。

――最後に、これから投資を始める人に向けてメッセージをお願いできますか。

投資と言われたら、一攫千金を狙う「肉食系」なイメージが強いかもしれないですが、安易に信じないで欲しい。飲み会や女子会1回分の金額を積み立てる「草食系」投資から始めてみてください。

豊島さんの金言!
“一攫千金を狙う、肉食投資ではなく、あなたらしい草食投資で視野を広げよう”

Illusration : Damien Florebert Cuypers
Artist Management:Agent Hamyak

PROFILE

豊島逸夫
三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され、外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、ニューヨークの投資最前線でトレーダーの経験を積んだ後、金の国際機関ワールドゴールドカウンシルに入り、投資事業本部アジア・オセアニア地域担当本部長や日韓地域代表を歴任。金の第一人者となる。
2011年豊島逸夫事務所を設立。独立後は、活動範囲を拡大。自由な立場から、日経マネー、日経ヴェリタス、日経電子版などで、国際金融、マクロ経済評論などを行う。
オフィシャルサイト www.toshimajibu.org
モリジュンヤ(GOLD PRESS Contributing Editor)
2010年に『greenz.jp』編集部に参加。その後、『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』等メディアブランドの立ち上げに携わり、テクノロジー、ビジネス領域を中心に複数の媒体に寄稿。
「inquire」という編集エージェンシーの経営や、オンライン情報誌「UNLEASH」の編集長、ミレニアル世代向けビジネス誌『AMP』の共同編集長、ライティングを学び合うコミュニティ「sentence」のオーガナイザー、NPO法人soarの副代表理事などを歴任。