豊島さんに聞いてみた! 007 | 2018.12.26
ライフステージで変わる投資のポイント
Text by

豊島逸夫×モリジュンヤ

Itsuo Toshima×Junya Mori

投資の専門家・豊島逸夫氏に、気鋭の若手編集者・モリジュンヤ氏が「投資の難しいこと」を伺っていく本連載。

第7回では、若者、子育て、シニアなど、ライフステージごとに変わる、押さえておくべき投資のポイントや考え方を学んでいきます。

 

絶対に投資は焦って始めない

 

 

――就職したり、結婚したり、とライフステージが変わるタイミングは投資を始めようかなと考えやすいと思います。ライフステージごとに、投資のポイントは異なるのでしょうか?

まず、ライフステージにかかわらず共通して言えるのは、人がやっているからと言って焦って始めるのは、絶対に避けた方が良いですね。

例えば、2018年の前半は「トランプ相場」と呼ばれて株価が上がっていました。会社の同僚の中には、トランプ相場で儲かっている人もでてくる。それを知って「乗り遅れないようにしないと」という動機で始めるのは失敗の元です。

日本人は、知り合いが得をしている時に乗り遅れていることが分かると、焦ってしまう傾向があります。その一方で、みんながやっていることをやって損をするのはしょうがないという考えになりやすいんです。不思議ですよね。

――どのライフステージにおいても焦って始めることなく、以前伺ったように小さく始めることが大事なんですね。

そうですね。もちろん、共通しない要素もあります。ライフステージによって投資した方が良い対象は異なりますし、リスク許容度も人によって異なります。それを踏まえた上で、ライフステージごとの投資アドバイスをしていきましょう。

 

 

 

敗者復活戦がある
若者の投資

 

――では、まず若者に対する投資のアドバイスから聞かせていただけますか?

今の若者は、そう簡単に年金がもらえない世代です。それだけではなく、受け取る年金も自分で運用しなさい、と言われてしまうような世代。自らの資産を運用するために、投資は嫌でも考えないといけません。

ただ、若者が他の世代と大きく異なるのは、敗者復活戦が可能であること。もし、少額から始めた投資で失敗したとしても、まだ人生の先が長い。そうすると、リスクをとって投資ができますし、元本保証のないリスク資産にも徐々に慣れていけるだけの時間があります。

ドル預金や「ブルーチップ」と呼ばれる優良株式銘柄への投資などを通じて、少しでも投資を知ることから始めましょう。将来、買おうとしているものや好きなものに関連する投資から始めるのが良いでしょう。ヨーロッパが好きな人であれば、ユーロ預金も良いですね。

ただ、ハイリスクハイリターンの博打になってしまうため、先物取引はおすすめしません。リスクを分散できるように投資先を考え、組み合わせることが大切。また、若者は先が長いので積み立てが有効です。

 

 

 

子どもが生まれると投資への姿勢も変わる

 

――少しライフステージが上がると投資のスタイルはどう変わるのでしょうか?

結婚しているかどうか、子どもがいるかどうかで投資に対する姿勢は変わってきます。例えば、子どもがいなくて、ダブルインカムの場合だと、FXやビットコインなど、リスクをとった投資を選びがちです。人は2人になるとリスク許容度が高くなるんです。ところが、子どもが生まれると投資を長期で考えるようになり、慎重になります。

私の講演にも、子ども連れで参加する人も多いですね。講演では、長期投資へとスタンスが変わった人には「迷わず積み立てなさい」と伝えています。その時は、合わせてスイスの金貨アルバムの話をします。スイスでは、金貨と誕生日の写真を貼って、アルバムをつくっていき、子どものための資産にするんです。この話は共感を得られますね。

あと、この世代は「相続」への興味が強くなっています。相続税が上がり、土地の相続などにもかなり税金がかかります。そうすると、相続対策の話に関心が高まる。子育て世代は、約30年後には相続で思わぬ形で裕福になる可能性も高い。そのためには資産運用の勉強が必要で、相続がきっかけでリテラシーが高くなっていくことも考えられます。 

 

 

 

相続におすすめな「金(ゴールド)」の3つのメリット

 

――さらに世代が上がり、シニア世代だとまた投資のスタイルは変わるのでしょうか。

シニアになると、また投資のポイントは変わりますね。まず、シニアには配当が欲しいという人が多い。現役時代には毎月給与がもらえたにもかかわらず、定年を迎えると毎月の収入がなくなってしまいます。それが不安で、配当が欲しくなるんです。

4〜5年前に、高配当の投資信託が流行りました。しかし実際のところ、それらは元本の一部から配当金があてられているものが非常に多く、社会的な問題にもなりました。配当を求める投資は、勉強が必要です。

そんなことがあったにも関わらず、シニアの方々はバブル世代ということもあり、一攫千金の夢も残っている。これはなかなか変わらないかもしれません。

一方で、孫に何か残したいという願望も強い。子どもや孫のための積み立てをおすすめしています。その際、おすすめの投資対象が金(ゴールド)です。金(ゴールド)には、「固定資産税がかからない」「いつでも売れる」「小分けができる」という3つメリットがあります。

最近は、細かく金(ゴールド)を買っていく現象が共通して見られます。これは相続のために買っているからですね。小分けができ、争続(そうぞく)を回避できる金(ゴールド)の利点が評価されているわけです。相続を視野に入れた投資には、金(ゴールド)がおすすめです。

豊島さんの金言!
“周りの人に流されず、自分のリスク許容度にあった投資を”

Illustration : Damien Florebert Cuypers
Artist Management:Agent Hamyak

PROFILE

豊島逸夫
三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され、外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、ニューヨークの投資最前線でトレーダーの経験を積んだ後、金の国際機関ワールドゴールドカウンシルに入り、投資事業本部アジア・オセアニア地域担当本部長や日韓地域代表を歴任。金の第一人者となる。
2011年豊島逸夫事務所を設立。独立後は、活動範囲を拡大。自由な立場から、日経マネー、日経ヴェリタス、日経電子版などで、国際金融、マクロ経済評論などを行う。
モリジュンヤ(GOLD PRESS Contributing Editor)
2010年に『greenz.jp』編集部に参加。その後、『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』等メディアブランドの立ち上げに携わり、テクノロジー、ビジネス領域を中心に複数の媒体に寄稿。
「inquire」という編集エージェンシーの経営や、オンライン情報誌「UNLEASH」の編集長、ミレニアル世代向けビジネス誌『AMP』の共同編集長、ライティングを学び合うコミュニティ「sentence」のオーガナイザー、NPO法人soarの副代表理事などを歴任。