豊島逸夫の手帖

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ブッシュ勝利後の金価格動向

2004年11月4日

結論から言えば、9月10日づけ本欄"大統領選挙と金価格"で述べたことと変わらない。金市場が最も注目する双子の赤字(※)は悪化する公算強く、イラク等の地政学的リスクが弱まる可能性は低い。したがって、金価格の上昇トレンドはいささかも変わらない。

海外金価格は選挙当日の2日に7ドル急落したのち、3日にブッシュ有利がはっきりしてからは4ドル反騰して424ドルの水準にある。目先は430ドルの壁が厚い。大統領選挙直前に430ドルを突破する場面も見られたが、結局跳ね返された。まだ、420ドル台での揉み合いが必要のようだ。

長期的にはブッシュ政権第二期のシナリオを考えるに、同時に行われた上院議員選挙における共和党勢力拡大のほうが予想を上回る現象として注目される。これで、財政赤字を拡大させる減税も対イラク支出もブッシュ率いる共和党の思うがままになろう。米国全体が大きく保守主義に傾いていることを象徴するでき事だ。殻に閉じこもった米国民は自国が他国に大量の赤字を積み上げていることには全くと言っていいほど無頓着である。経常赤字も更に膨れ上がる。このままゆくと第二次ブッシュ政権の4年間に膨大な財政、経常赤字のつけの支払いを迫られるであろう臨界点が訪れそうだ。それは経済有事の勃発を意味する。

政治的に見ても、911同時多発テロ後初の大統領選挙で米国民は対イラク強硬路線をはっきり追認した。米国としては非常事態の継続である。その有事にあたって買われるのはドルではない。やはり金である。

以上のような市場環境のなかで金価格の上昇トレンドは少なくともあと4年間は続きそうだ。


米国の二つの赤字、すなわち「財政収支の赤字」と「経常収支の赤字」のこと。2000年以降、増大の一途をたどっている。このまま赤字が拡大すると、金利の上昇やドル暴落の恐れがあり、世界経済に深刻な打撃を与える可能性があることから、米国の「双子の赤字」は世界の重大関心事になっている。
 
2004年