豊島逸夫の手帖

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ペイオフ全面解禁前夜の金市場

2005年3月18日

ペイオフと金についてはこれまでも色々議論されてきた。筆者もこの関連につきセミナー等の最前線で、一般投資家と膝つき合わせて一問一答してきた。そこで特に強く感じてきたことは、ペイオフをきっかけに確実に資産分散が始まっているということだ。但し、前回のような切迫感はない。3月31日までに預金を解約して金に逃げ込むという現象は見られない。そのかわり、徐々に相場展開を見ながら金について研究し買い始める、或いは買い増してゆくという動きだ。

筆者は昨年末から日本経済新聞社主催のゴールドセミナーで計7回講師を務めてきたが、各回ともに参加者が通常の倍以上に達し、慣れっこのはずの事務局の人たちも目を丸くしていた。セミナーのタイトルには全てに亘って"ペイオフ"という文言が入っていた。会場の熱気もかなりのレベルで、例えば、会場の金地金陳列コーナーは休憩時間中には決まって黒山の人だかり。大阪や名古屋の会場では、司会がこれから始めるから着席してくれと何回か連呼してもなかなか席に戻らない。たまたま取材に来ていた某マネー誌のベテラン記者氏もびっくりしていた。

質疑応答で出る質問は、ペイオフというより、財政危機、増税、年金問題、インフレ等等から資産を如何に守るかということに尽きる。ペイオフというのは資産分散の単なるきっかけになっているにすぎない。銀行預金でさえリスクアセットになるということがリスク分散へ最後の一押しになっているのだ。

あとは価格次第である。今年に入ってからも一月の価格下落時には一斉に新規購入者が殺到したが、2-3月に価格が反騰した後は、模様眺めを決め込んでいる。じっくり価格動向を見極めつつ慎重に購入を決断してゆく。分散購入も目立つ。

ペイオフと金というとどうしても前回のゴールドラッシュのイメージが先行しがちだが、投資家は至って冷静なのだ。筆者は今回の方が健全な現象であると感じている。ブームのような派手さは無いが、確実に金へのマネーシフトは進行している。

2005年