豊島逸夫の手帖

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NY株安の影響

2006年1月24日

NY株がもたついている。昨日の欧米メディアは、フォードのリストラ策(14工場閉鎖、30,000人員削減)のニュースがトップ。ライブドアどころではない。解雇された労働者の悲痛な叫び。"日本のカーメーカーで働きたい"。日本のメディアがライブドアで日本市場の信頼が傷ついたとひどく心配するのと好対照である。

先週のインテル、ヤフーの決算報告失望に続く株安の流れが、欧米年金の株離れ、商品へのシフトに拍車を掛けていることは、間違いない。代替投資(Alternative Investment)と呼ばれる新たな投資分野への分散運用が加速しているのだ。代替投資とは、株や債券などの伝統的資産とは独立した値動きをする資産の総称で、代表的なものにヘッジファンド、未公開株、そしてコモディティー(商品)などがある。

先週も英国最大の年金運用機関ヘルムズ(BT=ブリティッシュ テレコムの年金を運用)が、総運用資産340億ポンドの3%に相当する10億ポンドを商品で運用すると発表。その際のコメントとして"商品価格上昇に乗るというより、株のリスクの分散が目的"と述べている。発言を引用してみよう。

We are in commodities in the long term. It's strategic.(商品参入は長期的だ。戦略的判断である。)

ちなみに他の資産の運用比率は、株60%、債券12%、不動産12%、ヘッジファンド2%となっている。この比率は5-10年間変えるつもりはないと言う。

欧州最大の年金ABP(オランダ公務員年金基金)も、既に2001年から総資産1900億ユーロの3%を商品で運用している。

総じて、短期的リターンの追求ではなく、長期戦略的資産運用シフトということを強調しているのが特徴だ。

従って、金価格で云えば、550ドル台という高値圏においても、長期上昇トレンドにあるとの判断で、徐々に買いを積み増してゆく。これが金ETFの堅調な伸びの背景である。

彼らは、金市場ではニューフェース。従って、金価格がいずれまた安くなるだろうとの期待感=安値覚えという感覚にも染まっていない。

さて、昨日のNY市場は560ドル近辺まで戻し、本稿執筆時点(1月24日朝8時)ではスポット559ドルである。短期的にはプロのディーラーの間で、戻り売り(反騰したところを売りで入る)により投機的売買差益を稼ごうとの動きも出始めた。

2006年