豊島逸夫の手帖

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次の一手は?

2006年1月27日

560ドル前後で水入り状態なのだが、この水準は如何にも中途半端。至って居心地が悪い。こんな時は足元の値動きを見ていても詮無いこと。一服して新聞でも読み次の一手を考えるに限る。

ということで今日(1月27日)の日経朝刊に目を通せば、あるある、金市場にとって無視できない記事が3つあった。

その1:社説"中国は高成長をいつまで持続できるか"
もし中国経済の減速が顕著になれば、これは金を含め商品市場には大きな下げ要因となる。中国経済が風邪を引けば、商品市場は肺炎になろう。一昨年のゴールデンウイーク直前に中国首脳の引き締め発言が飛び出し、ヘッジファンドが一斉に引いて商品市場が吹っ飛んだ事例が記憶に新しい。今回は高速道路を突っ走る中国経済が、一般道路に降りてスムーズに巡航速度までスローダウンできるか(ソフトランディングかハードランディングか)否かが、金価格にも大きな影響を与えるので要注意。

その2:GM赤字9900億円に(国際面)
これはかなりやばい。隣の小さな記事で"米大統領 GMとフォード救済に消極的"とある。GMにもしものことがあれば、これはエンロン危機どころの騒ぎではない。特に、今年、金融危機が発生してFRBが困るのは、従来のような緊急流動性注入という切り札が切れないことだ。切れば、原油高騰によるインフレ懸念という火に油を注ぐ結果になる。バーナンキさんも、就任任早々かなり大変な決断を迫られることになろう。"就任一年目は腕試し"などとのんきなことを言ってはいられない。信用リスクの高まりが、実物資産への回帰現象を誘発するパターンを頭の隅に入れておく必要がありそうだ。ちなみに、住宅バブル破綻が起きるか否かは、FFレート5%以上になるかならないかが分岐点のようだ。

その3:ハマス圧勝 過半数へ-パレスチナ評議会選(一面)
これもやばい。パレスチナのハマスと言えば、イスラム原理主義=テロの連想が働く。ただでさえ、イスラエルのシャロン首相が脳出血に倒れ、不安定な状況なのだ。中東情勢は、イラク、イラン、そしてパレスチナの3つのベクトルが絡んで、解不能の三元連立方程式みたいになってきた。一時は陳腐化した地政学的要因が急速に再浮上しつつある。

以上、諸々の要因を天秤にかければ、引き続き上げ材料のウエイトが勝る。一過性ではない、根の深い構造要因が複合的に絡み合い、"本日のシェフお奨めメニュー"みたいに日替わりで入れ替わる日々が続きそうだ。

2006年