豊島逸夫の手帖

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健全な調整売り

2006年2月8日

やっと来ました、くるべきものが。今や来るべきと、思って久しい売りだ。雪崩を警戒していたが、いっこうに起こらない。大丈夫かなと思って一歩登り始めた矢先であった。

前日比20ドル下げて、本稿執筆時点(2月8日朝7時)でスポット548ドル。550ドルを割り込んだ、という表現もできるし、これだけ売られても未だ550ドル近辺か、とも言える。

模様眺めを決め込んでいたアジア中東の実需家にとっては正に恵みの雨。集中的な現物買いが入ろう。ETFのほうは、押し目の買いと利益確定売りのせめぎあいになろう。

NY先物は原油、銅、銀、プラチナ全てにわたり売り手仕舞いモード。ここ数週間に積もった新雪(=投機的買い)が強風で吹き飛ばされ、根雪(=長期保有の買いの蓄積)の部分が露出してきたイメージだ。イランなどの有事の金を囃して買い上げてきた投機筋はそろそろ逃げ腰か。(2月6日付け"有事の金の誤解"参照)

中長期的に冷静に見れば、とにかく、表題どおり、健全な下げである。これまで上昇トレンドを支えてきた要因にいささかの変化もない。600ドルを目指す相場の足固めと考えるべき。あのまま上に突っ走って、結局は逆V字型のspike(打ち上げ花火みたいに派手だがすぐ消えるパターン)で終わるよりは、持続性が期待できる展開になってくれて筆者は内心ホッとしている。長期上昇トレンドの流れを考えると、できればもう一段下げて投機的に買われた部分を完璧に振り落としてから再上昇を始めたいというのが本音なのだが...。スキーをする人なら分かると思うが、根雪の上に新雪が残っていると実に滑りにくいものなのだ。

為替はオーバーナイトで円高に転じ、一時117円台も見た。したがって、今日の円建て金価格は相当の下げになろう。海外金安と円高の組み合わせは、実需筋にとっては買い易い日である。

2006年