豊島逸夫の手帖

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今日のシェフのお奨めは"買い"

2006年2月17日

筆者のお奨めという意味ではない。日替わりメニューみたいに、その日のお奨め材料で日々の値動きが上下しているのだ。昨日の日替わりお品書きは"独政府、金売却断念"という一通信社の報道であった。市場は 待ってましたとばかりに飛びつき549ドル(本稿執筆時点2月17日朝9時現在)へ10ドルがた反騰。でも、このハナシにサプライズ性は無い。例えば、GFMSの最新ゴールドサーベイでも、この可能性について触れ、ワシントン協定による年間500トンの金売却枠は未達に終わると論じられている。

初心者の方のために、一応説明しておくと、ドイツの保有金売却を巡り、政府と連銀が対立してきた。政府は財政支出を補完するため金売却資金を活用したいのだが、連銀は自分たちの管轄事項に余計な口を出すなと中央銀行の独立性を楯に一貫して拒否してきたのだ。計画では5年間で500-600トン程度の売却が見込まれていたゆえ、需給バランス上、無視できない量である。これが棚上げされると、主要中央銀行間で年間金売却量の上限を500トンに自主制限した規定があるのだが、なにも自主規制しなくても、それほどの規模には達しないわけだ。

90年台は、各国の中銀が競って金売却に走り、金価格も一時は250ドルまで沈んだ経緯があり、そのような協定ができた。ところが、今や、売るより金を買いたいという中銀も多く、"中銀売却"という売り材料もインパクトが薄れた、というハナシなのだ。

それにしても、まだ残党がお江戸の市中に残っていたというべきか。集中的現物買いで戻したという展開ではない。まぁ、筆者の見るところ、たまにはショート(空売り)から攻めてみようかと遊び心を出した投機筋が、独関連報道で、やばいやばいと手を引っ込めた感じだね。コメント風にまとめればショートカバーというやつだ。とにかく、近年の相場つきではショートなんてそうそうできないよ。これはやった者しか分からない心境だけど、空売り青天井とか言われ、ショートしているときに上げ材料が出ると本当に気味悪いものだよ。ここ数年にデビューしたデートレーダーさんたちに言っておくが、ショートして急性胃炎のひとつも経験しなくては一人前とは言えない。その急性胃炎でご臨終では困るけどね。

2006年