豊島逸夫の手帖

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600ドル目前。これからどうなる。

2006年4月4日

昨年はドルと金は逆相関というこれまでの通説を覆し、今年は、金利を産まない金は利上げなら売りという通説をも覆し、とうとう600ドル寸前まで来てしまった。従来の教科書が当てはまらないところに金市場の、大袈裟に言えば歴史的変質を感じる。

足元では、利食いで580ドルまで売り込まれたところで、押し目はすかさず買い上げられ、昨晩のNYでは590ドルを突破。その後、若干緩み、本稿執筆時点(4月4日朝7時)のスポットは588ドルで推移。期も改まり、期末で一旦売り手仕舞った向きの再参入も目立つ。

ここまで来ると、600ドルをつけるか否かというより、600ドル到達の後どうなるかが気になるところだ。やはり、金利を産まない金という事実は重いので、ポイントは今後の金利動向と思われる。筆者が見る今後のシナリオは、あと2回利上げ継続=FFレート5.25%まであり。しかし、平行して米住宅市場の減速感強まり、バブル破綻回避のため、バーナンキ率いるFRBとしては、利下げへの転換を迫られる。つまり、今年後半には、米国に関して金融緩和の方向性が見えてくるのではないか。そうなると、金融商品、マネーとしての金は年金により更に買われる地合いとなる。先物、ETFともに残高は増えそうだ。

かたや、コモディティー(商品)として金の需給に目を転ずれば、アジア、中東中心に地上在庫の還流ラッシュが600ドル越えで加速しよう。宝飾需要も減少。需給バランスは緩み、これは市場にボディーブローのように効いてくる。 グローバルな傾向としては、欧米買い、アジア売り という構図になりそう。中東は、退蔵の売り戻しを、オイルマネーの買いで相殺するだろう。インドははっきり買い手控えモード。

但し、アジア、中東の退蔵需要、宝飾需要は、消えたわけではない(女性の身を飾るという欲望がなくならない限り)。高値慣れすれば、押し目を貪欲に拾ってくる。バーゲンハンターと言われる所以だ。

以上をまとめて見れば、短期的乱高下を繰り返しながら、徐々に下値を切り上げるという展開が続きそう。

先物買い主導の上げで、売り戻しがブレーキをかけ、押し目は現物需要がサポートする。今後600ドルを超えても、先高感は引き続き強い。

数少ない下げ材料を探せば、サプライズがあるとすれば中国か。今回の金上昇は商品、特にメタル全般の上げに引っ張られている面も強いので、逆に言えば、メタルの下げに引きずられる可能性もあるということだ。丁度2年前のゴールデンウイーク直前に中国首脳の引き締め示唆発言で、商品からヘッジファンドが一斉に引いたという暴落局面が思い出される。

それ以外には 想像力を逞しくしても売り込まれる状況が思い浮かばない。 なお、ここにきて、初心者からの問い合わせも激増しているのだが、本欄2005年12月2日付け"初心者向け・金がなぜいま上がっているか(保存版)"を読んでみてください。状況は全く変わっていまぜんから。

2006年