豊島逸夫の手帖

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原油高の金への影響

2006年4月24日

600ドルを超えてからの日々の値動きの荒さはハンパではない。先週の原稿の見出しを追ってみても、620ドル突破、640ドル突破、610ドルへ急落、そして最終的に630ドル台で怒涛のような週を終えた。最後は、シルバーの乱高下に翻弄されたカタチ。

今週も、各種材料が目白押し。

バーナンキ議会初証言。米国GDP、住宅関連(中古)データ発表。そして、なんといっても原油価格動向。

NY株も原油高をものともせず高値を追ってきたが、やはり気になるのは、原油高騰の企業業績への影響。今週は米大手企業の企業業績の発表が相次ぐ。

原油高の金市場への影響についての質問も頻繁に受けるが、常識的にはインフレ懸念=インフレヘッジの金買い増加というシナリオ。次に、オイルマネーの金への分散というシナリオ。これについては、先週もサウジ株が再び急落。欧米銀行預託資産の凍結を恐れ中東回帰傾向が強まるなかで、行き場を失ったオイルマネーの動向が気になるところ。

そして、原油高は欧米年金の株安ヘッジのための欧米年金基金のオルタナティブ(代替)投資傾向を加速し、その一選択肢としての天然資源、その代表格としての金ETF購入を促進する効果もある。(この一ヶ月ほどの金高騰の間もETF残高は利益確定の売りをこなし、11トンほど増加。先週末時点で451トンである。)

この点に関して、今後の注目は、GFMS予想のように高値圏で宝飾需要が本年は500トン近く急減すると、ETFがそれを補って500トンほど増加するかということ。これはかなり高いハードルではある。

なお、金はここまで、原油、銀、銅などの商品高騰=コモディティー ラリーに引っ張られた面もあった。ということは、コモディティー クラッシュにも巻き込まれる可能性もあることを先週のシルバー連れ安のでき事が示したとも言える。

相対的に買い材料が断然優り、売り材料を探すのに難儀するような金市場だが、金独自の要因以外の材料で下がる場合もあるのだ。まぁ、それは格好の買い場となるであろうが。

買い場といえば、教訓になるエピソードを最後にひとつ。

先週金曜夜、新大久保でイタマスという珍味を賞味するために集った、この道20年のディーラー通称ブルース氏の話だ。彼はその晩、会社を出る直前、ちょうど欧州勢が出勤してくる時間帯に銀11.60ドルという当日の最安値を拾った。(ちなみに今朝は13ドル台回復)。曰く、たまたま自分は部下のピンチヒッターだったので、いわば無欲の勝利でどん底を買えた、これが、もし自分が四六時中シルバーに張り付いていたら、もっと安値を狙って結局買いそびれたであろう。これは、筆者も度々経験したことで教訓とすべし。

個人投資家は、先週来の派手な日々の相場動向に目を奪われ、自分もディーラーになったような心境になってはいけない。意識的に距離をおくことが大事だ。5年前にふと金を買っておいて、忙しさの余り、すっかり忘れていたのが、たまたま何かで金価格高騰を知り、さぁ、それから売るべきか否か、眠れぬ夜が続き、げっそりした個人投資家の例もある。Buy and forget. 筆者流に言えば、買ったら5年間冬眠できれば最高なのだが、そうもゆかない。つくづく、投資とは自分の欲との戦いだと痛感する。

2006年