豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 650ドル台へ続落
Page154

650ドル台へ続落

2006年5月22日

朝から健康診断でPC使用禁止の環境におかれ更新が半日遅れた。

さて、米国消費者物価上昇率の思わぬ上昇は、各マーケットに甚大な影響を与えている。今、市場に流れている解釈は、原油高が景気の腰を折り、ここで物価上昇に反応してバーナンキが利上げを継続すると冷やしすぎ(=オーバーキル)に陥るというもの。インフレというより、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の同時進行)という最悪シナリオである。株も下げ、商品も下げ。このシナリオで潤うセクターは無い。マクロ経済全体が縮小均衡の道を辿る。

このように書くと、エーッ、そんな、勘弁してよ、という読者の声が聞こえてくるが、心配はご無用と思われる。

金に関しては、とにかくここまでの行き過ぎ(=オーバーシュート)に対する反動=調整である。何度も書いてきたが、これで、やっとまともな相場になった。700ドルのときに、筆者はまともなコメントを書く気になれないと述べたのが、正常に戻りつつあるということだ。

バーナンキの対応にしても、刻々変動する経済統計に柔軟に対応して金利を決定するというスタンスである。神様ではないから、締め過ぎる可能性も、逆に、利上げが遅きに失する可能性もある。金に関しては、利上げしすぎてデフレに陥るシナリオなら、近年の例で言えばデフレスパイラル=信用破綻の信用リスクに対するヘッジで買われるし、利上げが間に合わずインフレに発展するシナリオなら、インフレヘッジで買われる。その中間、所謂Goldilocks(ゴールディロックス)という状況、即ち、インフレでもデフレでもない理想的経済状態のときに、金の出番がなくなり、売られることになる。その場合は、株や債券のポートフォリオで不安はなく、金などのヘッジは不必要になるからだ。

相場の流れとしては、これからが買い場探しの局面となる。

既に、アジア中東の現物市場では、待ったましたとばかり、現物の買いが出始めている。ここからは、現物が下値を支えよう。

2006年