豊島逸夫の手帖

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911同時多発テロから5年目

2006年9月11日

本日は、初心者向けの原稿です。

米国同時多発テロから5年目。ということは本格的金価格上昇トレンドが始まってから5年目ということになります。1999年にワシントン協定が締結され中央銀行金大量売却の不安が和らぎ、250ドル台を大底に金相場は反騰しましたが、300ドルの大台は回復できずにいました。やはり有事の金は死んだ。もはや金などという時代遅れで役立たずの資産の出る幕はない。と言われたところへ降って湧いたような911事件でした。

あの24時間で株、ドル、債券、原油全てのマーケットが暴落するなかで金だけが急騰。その1ヶ月前に"有事の金の終焉、有事にはドルの時代"という記事を書いた同じ記者が取材に見えて書いた記事の見出しが"有事の金の復活"というものでした。それほどまでにあの事件はマーケットの潮流を一変させるインパクトがあったのです。

その後、イラク、アルカイダ、パレスチナ、イランと立て続けに"有事の金"を連想させるでき事が相次ぎ、最近はマーケットのなかで"有事の金"という材料も陳腐化しつつあります。ヘッジファンドなどの投機筋が一般個人投資家を煽って金を買わせるために、意図的に囃すときの材料としてマーケットに流されているフシもあります。

そもそも有事の金という考えは、有事に際しては金が頼りになる、頼りになるということはそれを売って当座を凌ぐ手段として使われる、ということですから、平時に買っておいた金を有事には売ることを前提としています。911の後も、先物市場における"有事の金"という買い材料は一ヶ月くらいしか持ちませんでした。ですから、"有事の金"買いで一儲けというような投機的発想に対して、筆者は以前から警鐘を鳴らしています。そもそも有事になってから金を買うのでは最早遅い。

とはいえ、個人投資家の立場からは、将来の老後とか子供のことを考えるに、何が起こるかわからないのも事実。そこで大切な財産に対してテロ対策を講じておくことも必要という困った時代になりました。その手段としては、金は有効ですから、普段からこつこつと純金積立で金を蓄えてことはお薦めできます。老後を控えた団塊の世代の筆者が実践していることでもありますから。

2006年