豊島逸夫の手帖

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おいてけぼりのジャパン

2006年9月22日

今週は中国出張中。

香港で開催中のアジア最大の宝飾展では、アジアの物流の主流を実感。痛感。日本は完璧に取り残されている。バイパス ジャパン。近年、日本には殆ど顔を見せないイタリア大手の社長連中が大挙して参加している。日本勢のブースの存在感も"寂しい"の一言。

本欄6月28日付"アジアの中の日本市場"では、シンガポール出張の際、日本の規制で金融商品面でも日本抜きでハナシが進んでいることに危機感を覚えていることを書いた。その後、金ETFが同地で上場の運びとなり、次は香港でも動きが見られる。

怖いのは、ちょっとの間でも東京に閉じこもっていると、新しい動きが見えなくなること。金の世界では、日本がアジアの中で離れ島化している。現地の熱気にジェラシーさえ感じてしまうのだ。

さて、マーケットのほうは、今週の材料の目玉=FOMCは想定内の結果でサプライズなし。570-80ドル水準で下げ止まった感あり。しきりに宝飾需要の下支えがマーケットでは語られている。たしかに、中国の需要を現地において肌で感じると、コモディティー サイクルの終焉などという議論に空虚ささえ覚えるね。

とはいえ、5-6月に続き、今年2回目の商品市場調整局面入りであるが、前回に比して、今回の特徴は、世界的に投資家のリスク許容度が落ちていないこと。原油価格という波乱要因にやや鎮静化の兆しが見られ、インフレ懸念後退という市場環境下で、投資家の先行き見通しに影を落としていた不透明感が除去されつつあるからだ。

キャリートレードが復活し、円キャリー、そしてスイスフラン キャリートレードなどが見られる。その手法で何が買われているかといえば、ハイイールドの債券とか中堅国家の通貨(エキゾチック カレンシー)など。商品には来ていない。

そのなかで原油安に引きずられて金も下がってきた。

とはいえ、原油がこのままずるずる下がる感じではない。OPECの余剰生産能力は一日あたり200万バーレル。対して、国別生産量はイラン390万、ナイジェリア230万、イラク210万、メキシコ湾150万(バーレル)。これらの地域に紛争とかハリケーンなどが勃発すれば、途端に需給は逼迫する構造だ。

気になるのは金ETF残高が486トンへ若干の減少を見せたことかな。手仕舞い売りが新規買いを上回っていることを物語る。400ドルくらいから買い上がっているから、利益の一部確定の動きなのだろう。

第二次ワシントン協定の年度末もいよいよ近づき、マーケットには依然、駆け込み売却の噂も流れるが、WGCロンドンの詳細な国別売却データを検証しても、どう見ても年間5000トンの売却枠のなかで100トン強は未達になりそう。この分の翌年への繰越はできない仕組みだ。

中銀の金関連材料というと、これまでは専ら売却だったが、筆者は寧ろこれからは購入サイドの情報に注目が移ると思う。UAEに続く対外準備資産ドル離れ、ユーロそして金への分散の例が他でもいずれ出るだろう。

最近はまっている中国茶を大量に仕入れて明日帰国。

2006年