豊島逸夫の手帖

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どこまで下がるの?パート2

2006年10月5日

パート2としたのは6月15日に同じタイトルで書いているから。実は今回の原稿の内容もパート1と全く変わらないのだ。読み返していただければ充分。こういうときこそ、冷静に相場の大きな流れを伝えるのが本欄の役割と心得ている。

目下、560ドル台まで急落が続いている。途端にマーケットには悲観論が渦巻く。こんなに皆弱気だったの?という感じだ。

さすがと思うのは金ETFが487トンに増え始めたこと。ヘッジファンドが逃げ出したところを、例によって年金が買うパターンが見て取れる。

今は、アンダーシュート中。Selling climaxともいえる。

相場が700ドルをつけた5月の段階では、オーバーシュート。相場の中に身を置くと、今がオーバーシュート中という感覚はなかなか掴めないものだけどね。

同様に、今がアンダーシュート中という感覚も、相場に翻弄されていると、なかなか掴めないものだ。この感覚の根拠を問われれば、スイス銀行の貴金属ディーラーで12年間、急性胃炎や急性肝炎は職業病という修羅場をくぐってきた人間の皮膚感覚というよりほかはない。

さて、今の相場を虫の目、魚の目、鳥の目(2月20日付け原稿参照)で見ると こうなる。

虫の目で見れば、ヘッジファンドがパニクッて、売り逃げに走っている。商品から株、債券へ投機マネーがシフト。

魚の目で見れば、原油60ドル割れ、インフレ懸念後退など、これまで金価格を引っ張ってきた"潮流"に変化の兆しが見られる。

鳥の目でみれば、中国、インドなどの成長の減速はあっても、長期的成長が止ったはずもなく、米国の双子の赤字に根源的解決の兆しも見られない。原油価格が下げ続けるだろうか。地政学的リスクを考慮しなくてもよい時代に戻れるのだろうか。年金マネーのインフレヘッジ、リスク分散のニーズがなくなるだろうか。そして、金生産が急増するほど経済的採掘可能埋蔵量が残っているのだろうか。

なお、投資家の間にも かなり動揺が見られるので、来る10月23日開催の日経マネー主催ゴールドセミナーの話も、急遽、どこまでさがる金価格というテーマに切り替えてじっくり話そうと思います。

関西の方には、明日、日経プラスワンセミナー(大阪)にて 同様にじっくりお話します。

2006年