豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. NY金650ドルへ急騰
Page238

NY金650ドルへ急騰

2006年12月1日

ドル離れ、金買いに弾みがついてきた感あり。ユーロと並んで英ポンドの上げも目覚しい。1992年以来の高値水準を記録している。

金ETFも一日で536トンから546トンへ急増。500トンの大台を超えてから急ピッチの増加が止まらない。明らかに大口の機関投資家が入っているようだ。"どうなってるの"とNYの担当者自身が舌を巻くほど。

相場が600ドルを超えてからは、市場内部には懐疑的、慎重な見方も多く、反落の可能性も囁かれてきた。しかし、今、金ETFを買っている投資家はまずこれまで金市場とは無縁であった人達が殆どだ。ゆえに、"金市場の常識"みたいな過去の経験則には染まっていない。逆に、長いこと下げ相場を経験したベテランほど、強気になりきれない傾向がある。新たな投資マネーが流入するマーケットによく見られるパターンだと思う。

今回の上げは、典型的な下値切り上げ型だ。一挙に大台をすっ飛ばして急騰を続けるような展開ではない。徐々に弱気派が振り落とされてきた感じである。背景にこれまでドルを貯めこんできた(或いは貯めこまざるを得なかった)国や投資家のドル離れという、グロバールな構造的マネーフローの潮流の変化があるので、ヘッジファンドの投機的金買いというような持続性に欠ける現象ではない。

なお、金市場動向についての詳しいレポートが今発売中の日経マネー1月号105-117ページに筆者の講演採録のカタチで紹介されている。1時間の取材で語ったことが1ページの半分程度のスペースに要約されるのと違い、各論に亘ってよく纏められているので是非お読みいただきたいと思う。

2006年