豊島逸夫の手帖

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ニューイヤークラッシュ パート2

2007年1月10日

昨晩のウオール街のトピックは原油安一色。

ここまで商品に分散運用してきたファンドなどが次々に手仕舞いモード。マーケットの流れを語るキーワードは、インフレ懸念後退、リスクマネー撤退、市場の流動性下落、エマージング(開発途上国)株式へのウエイト配分低下、などなど。

この同じ言語群を昨年も2回聞いた。年半ばと秋口にかけてと。日銀の量的規制緩和撤廃、日米欧三極同時金融引き締めモード突入、世界同時株安、世界的過剰流動性縮小、その象徴的でき事が円キャリーの終焉とされた。(今、市場で語られる円キャリーはドル運用だが、当時は商品運用であった。)

そのとき、本欄ではこう書いた。(6月9日、更に同文を9月5日にも引用)

ここで最も大事なポイントは、過剰流動性が消滅したわけではないことなのだよ。とりあえず息を潜めて成り行きを見守っているだけ。世界的に流動性引き揚げとか言われるけれど、要は投資マネーが首すくめて、一時おとなしくなっただけなのだ。でも、人間は本当に欲深いゆえ、おカネ持った(持たされた)人達はウズウズしている。長期間に亘りジッツとしていられるわけがない。

そもそも、これまで株、商品を引っ張ってきた中国、インドなどの世界的経済成長のストーリーがこれで終焉を迎えるはずがないでしょ。一部悪乗りしてはしゃぎすぎた人たちが、酔いも醒めてすごすご帰り支度しているだけ。マーケットのfroth(泡の部分)が取れた段階と言えよう。

更に10月5日にはこう書いた。

虫の目で見れば、ヘッジファンドがパニクッて、売り逃げに走っている。商品から株、債券へ投機マネーがシフト。
魚の目で見れば、原油60ドル割れ、インフレ懸念後退など、これまで金価格を引っ張ってきた"潮流"に変化の兆しが見られる。
鳥の目でみれば、中国、インドなどの成長の減速はあっても、長期的成長がとまったはずもなく、米国の双子の赤字に根源的解決の兆しも見られない。原油価格が下げ続けるだろうか。地政学的リスクを考慮しなくてもよい時代に戻れるのだろうか。年金マネーのインフレヘッジ、リスク分散のニーズがなくなるだろうか。そして、金生産が急増するほど経済的採掘可能埋蔵量が残っているのだろうか。

そして今回だが、売りのマグニチュードから見れば、これまでより軽い。背景は原油下落と米国景気減速懸念。実はこの二つの要因はトレードオフ(二律背反)の関係にある。原油が下がれば、景気にはプラス。商品市場から見れば、原油安の価格効果はマイナスだが、所得効果はプラスである。

金を含めて商品市場が最も嫌うシナリオは、原油安というより世界経済同時成長ストーリーの崩壊だと思う。

原油価格上昇のみにベットしてきた(賭けてきた)投機マネーは撤退であろう。原油高に起因するインフレ懸念のみを見て金を買った投機マネーも同様である。でも、需要の拡大する稀少資源を買うというマネーの流れがマーケットにとどまり、更に拡大を続けるのは間違いない。

2007年