豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 大証、金ETF上場報道
Page250

大証、金ETF上場報道

2007年1月12日

一昨日から、時事通信、日経が相次いで「大証、金ETF上場計画中」と報道。たまたま電波圏外に居た筆者のところにも様々な問い合わせがあった。本件について当方は知らない。

夜には欧米からの問い合わせも入るところに、この商品に対する並々ならぬ関心の高さがうかがえる。特に業界の関心は、つまるところ自分のところの商品とカニバル(=喰いあう)のでは、という不安感に尽きる。

そもそも本商品は年金などの機関投資家向けに開発されたもので、その意味では、彼らのニーズに合う商品は無かった。問題は個人投資家だが、欧米型の金口座などのペーパーゴールド商品、あるいは金鉱株ファンドとは確実にバッティングするだろう。しかし、日本で売れている純金積立とか金貨、地金千両箱のような純粋の現物型商品とは、明らかに一線を画する。

金ETFという商品は、株、債券などの有価証券ポートフォリオの分散化の延長線上に位置づけられるからだ。ゴールドというコモディティーに信託契約が設定され、その受益証券というカタチで有価証券化され上場されたところに本商品の新鮮味がある。上場信託というネーミングもあるが、投資信託という範疇で考えれば、ひたすらゴールドを買い、それをひたすら保有し続けるというわけで、ウルトラパッシブとも云えようか。

それでは、先物とはどうか。金ETFは空売り(ショート)もできる。ここでは、金ETF売買のポジションから派生する先物取引が増えたというNYの経験が参考になろう。

総じて、若干カニバル部分もあるが、8割がた市場のパイを拡大させるというのが筆者の見方である。

個人投資家対象の金保有動向調査結果を見ていつも感じるのだが、未だに金を保有しているという回答は全体の10%強なのだ。それに対して金保有意向には20-30%の数字が出る。商品の多様化が、確実に新規投資家参入を促進する状況なのだ。

マネー誌の読者の反応を見ていても、これまで金関連記事などには見向きもしなかった人達が、金ETFのストーリーを読み、初めて金という分野に興味を持つという事例が見られる。

金の持つ通貨と商品の二面性のコラボレーションが売りの商品ゆえに、行政上の問題は残る。今年後半に導入される新法がキーとなろう。いずれにせよ、NY、ロンドン、パリ、シンガポール、シドニー、ヨハネスブルグに相次いで上場され、世界地図で見れば、日本だけが真空地帯の感もある。グローバリゼーションの流れには逆らえまい。

2007年