豊島逸夫の手帖

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米住宅市場異変の兆し

2007年2月9日

昨晩のNY株式市場の話題キーワードが、サブプライム(subprime)。

住宅ローンで最優遇金利(プライムレート)適用の融資審査基準に達しないグレードがサブプライムと呼ばれる。この分野は収益性高く(借り方に早期返済能力がないから貸し方から見れば長期に亘って金利収入を得られる)、多くの金融機関が競って(頭金不要とか様々な融資条件緩和して)事業を拡大してきた。

他方、この住宅ローン債権をパッケージ化して組成するデリバティブ商品も高利回り商品として人気化。かくして膨張したサブプライム分野で返済延滞、差し押さえ等が急増中という報道が昨年後半からしきりに流れていたのだ。その矢先、昨日サブプライムビジネスではトップ3の一つHSBCがサブプライム関連の貸し倒れ引当金を17億ドル積み増すと発表したことで、マーケットが動揺した。トップ3のニューセンチュリーという専門機関も市場の予想を裏切るカタチで第四四半期大幅減益発表。マーケットは"やっぱり"という反応である。金融株、住宅株が軒並み売られた。この問題は上記2社に止まらないという懸念である。

そうはいっても住宅市場全体で見ればソフトランディングできるという見方も根強い。いずれにせよ、今後のマーケット全体のリスクプレミアム拡大要素として、とくに金市場には未だ織り込まれていないサプライズ要因として意識はしておくべきと思う。エンロン破たんとかアルゼンチンデフォルトの際に信用リスクヘッジとして金への質への逃避買いが生じた経験もある。

さて、昨晩の欧米金市場は660ドル台突破。じりじり上げて引け際に大台に乗せた。直接的材料は、株式市場と異なりサブプライム問題ではなく、原油引き続き反騰、対ユーロではドル安、イラン宗教指導の報復宣言等々複合要因。
ドル円は円安121円の円安になっているので、海外金高+円安のダブル効果により円建て金価格は高い。

最後に、商品市場への注目度を示す下世話な話題をひとつ。ウオール街の高額ボーナスがなにかと話題になる中で、実態を調べて発表するコンサル会社も現れた。その調査対象にコモディティーディーラーもある。経験一年のAssociateクラスで年収1200万円(換算)、ボーナス1200万円、Vice President(中堅クラス)で年収2000万円、ボーナス6000万円、Director(上級管理職クラス)で年収3000万円、ボーナス2億4000万円。

なにやら日本の業界からため息が聞こえてきそうだが、これでも外為、債券、株式ディーラーに比べたら"かわいいもの"なのだよ。なんせ最高水準は100億円の桁なのだから。(松坂投手の"契約金"も驚くにはあたらないね。)

なお、ここまでくると"やりすぎ"ということで いくらAmerican Dreamの国でも世間の批判が高まっていることも付け加えておく。筆者の知人の数十億円クラスの連中は、別にブランド物とか超高級車をひけらかすわけもでなく、地味なライフスタイルで意識的に目立たないように生活しているのが実態だ。殊更に教会に通ったり、慈善事業に参加したりしているのがちょっと鼻につくけど。

そういえば、筆者が時折講演に呼ばれる超富裕層向けセミナーでも、都心の超高級ホテルの会場に来るのに、多くが地下鉄。着ているものも良い素材だけどデザインは地味。金に関しては、buy and sell ではなくbuy and forget という言葉を素直に自然に実行している。

2007年