豊島逸夫の手帖

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パンダの顔したキングコング

2007年5月23日

NY金価格は650ドル台で調整中。700ドルというバーを跳び越えるのに、今年すでに2回の試技。そして2回とも失敗。3回目の試技の準備中である。助走距離は長いほど高く跳べる。650ドルからの助走は、ほどよい距離といえようか。

いまの相場を数字で検証してみよう。
- NY先物買い残は423トンのピークから354トンまで急落。 - 金ETF残高も600トンを割り込み、583トンまで下落。
- ドルの対ユーロ相場は1.36から1.34まで上昇。
- 本年1-3月期のインド、中国宝飾需要は前年同期比で99.4トンから147.0トン(インド)、71.8トンから89.1トン(中国)へ急増。

これらの数字の示唆するところは、650ドルレベルではアジア中東の実需が下値を支えるが、700ドルに接近すると先物もETFも売り先行。方向感はドル相場の動向が決め手。

筆者の相場観では今が底。

さて、欧米マーケットの目下の話題は、もっぱらワシントンで進行中の米中経済戦略対話。そのムードをロンドンエコノミスト誌の表紙がうまく表現している。NYエンパイアステートビルにキングコングならぬジャンボパンダがぶら下がる図。上空には無数のヘリコプターが。

実際には中国サイドが米国の機嫌をとるために持参したお土産は、パンダではなく米ファンドへの直接出資。その額30億ドル。といっても膨張する中国外貨準備の増加量のわずか2日分。

とはいえ、外貨準備の金への分散が噂される金市場では、"なるほど、そういう手もあったか"という反応だ。中国人民銀行が直接金市場の買い手として登場するのは、いかにも影響が大きすぎる。けれどもワンクッションかませてファンド経由にすれば買い手の特定はされにくい。今後は中国に近いファンド筋の買いなどが様々な憶測を生む局面がありそうだ。

中国バブル破綻の噂は金売りの材料になり、中国外貨準備分散の噂は金買いの材料になる。やはり、何かにつけチャイナの存在は大きいと言わねばならぬ。

筆者も来月は、昨年に続き北京で開催される専門家養成のためのゴールドセミナーに招聘(しょうへい)され講演するのだが、昨年同様の聴衆=金融関係者の反応の進化が興味深いところだ。さらに昨年同様、SAFE=外貨準備運用担当部署との懇談会も用意されているとのことで、これも興味深い。現物だ、先物だ、という議論を飛び越えて、いきなりETFから始まるシナリオもありかと内心思っているところだ。

2007年