豊島逸夫の手帖

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長期金利急騰で650ドル割れ

2007年6月11日

ドル長期金利が5%を超えたことをマーケットは嫌気。株、金、ユーロというこれまでの勝ち組が揃って売られた。とくに金市場ではスタグフレーション(景気後退と物価上昇、金利高の同時進行)の可能性が嫌われている。

ドル短期金利についても、利下げ観測は後退し、利上げ観測が再浮上。多くのエコノミストが、金利見通しをこれほどまでに180度転換させることも珍しい。それだけマーケットもインパクトを感じているわけだ。

金価格は一気に650ドルの大台まで割り込んだので、上昇モメンタムが削(そ)がれたことは間違いない。しばらくは下値模索となりそうだ。ここでもし中国関連でマイナス材料の追い討ちでもかかると、売りに拍車がかかる。

しかし、冷静に考えれば、これで長期上昇トレンドが終焉というような状況ではない。前回詳説したように、そもそも金利を上昇させている状況(インフレ懸念)も考える必要があろう。ユーロ利上げも同時進行中なので金利差によるドル買いが続く状況でもない。

そもそも、利上げサイクルがドルは9回の攻防の大詰め。延長戦があるかどうかという程度。ユーロが6回、円が1回裏という大局観を思い出してほしい。
当面は640ドル台の攻防となろう。

今週の木、金と発表される米生産者物価、消費者物価動向が、かなり影響しそうだ。金利要因と言っても実質金利が最も重要だからだ。今週の材料はここに尽きると言っていい。

なお、金ETF残高が593トンから585トンへふたたび減少。ここでも売り買い交錯、一進一退の状況が続いている。

2007年