豊島逸夫の手帖

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流動性の収縮。

2007年6月29日

FOMCも予想通りサプライズはなく終わった。そう分かっていてもやっぱり気になるので、今朝3時からNYのCNBCの実況を見てしまった。(眠い)。

コアインフレについての表現が前回はelevated(高い)となっていたのが、その形容詞が今回は消えたということでインフレ懸念後退とかいう解釈であった。はっきり言って、そんな英文解釈はどうでもいい。これで方向性が出るわけではない。それより今週、市場関係者との対話で最も頻繁に出る言葉がliquidity crunch(流動性の収縮)である。

例のサブプライム関連ヘッジファンドの問題で、リスク志向の過剰流動性が引っ込んだ。ときあたかも外為市場では円高ドル安に振れ、これが円キャリーをベースにするリスクマネーの後退を加速とも言われる。そこで質への逃避マネーが米国債に流入という、おきまりのストーリーになっているわけだ。

CDO(資産担保証券)の問題もこれがマクロ経済に波及する可能性は薄いが、ドミノ式に資金が引き揚げられることの影響が18ヶ月は続くのではないかという見方もある。

昨日、食事した某米系大手金融機関幹部氏(米国人)のところで、たまたまCDOも組成しているとかで、色々聞いたのだが、CDOのCDOのCDOまであるそうだ。ファンド オブ ファンズみたいな連鎖である。信託契約などでもサブカストディアンの存在が当たり前であるから、ギョーカイにしてみれば抵抗感はないようだ。しかし、透明性という言葉からは程遠い実態であろう。前回述べた"冷凍牛肉コロッケ"問題との比喩を話したら、Bingo!その通り!と言われた。

さらに、住宅バブルから派生するシステミックリスクという言葉もまたぞろ語られている。金市場の関心は、システミックリスクが顕在化した場合の金価格の反応である。経済有事の際の金という問題だが、まずは、金買いというリスクポジションが手仕舞われ、場合によっては、株の損を補填(ほてん)するための益出し目的でも売られる。これが短期的反応。しかし中長期的には、リスクヘッジのためにポートフォリオに戦略的に金を組み込むという意識が出てくる。

現場での機関投資家の意識、行動を見ていると、金融不安の真っ最中に"ヘッジのニーズ"などの話をしても、足元の損失が気になって、心理的に"それどころではない"。でも、情勢が一段落するとヘッジについて考える心理的余裕も出る。それが実態であろう。

一時的に収縮した流動性も、いずれは次の宿を探さねばならぬ。いつまでキャッシュポジションや米国債だけに資金をパーキングさせるわけにもゆくまい。なんといっても、ファンドマネージャーとして、そんなことでは、たちまち存在意義が疑われてしまう。どこかの投資セクターにベットして(ポーカーチップを置き)リターンを稼ぎ顧客に還元せねばならぬ。

リスクマネー撤退=金売りといっても長くて1-2ヶ月の話である。

2007年