豊島逸夫の手帖

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気になる数字

2007年7月12日

今朝のニュースから気になる数字を挙げてみる。

―中国政府、中国経済成長率見通しを10.7%から11.1%へ上方修正。
人心安定のためには高度経済成長を持続せねばならぬ。けれども景気にブレーキをかけないとインフレを招く。この問題のパーフェクトな解決策は無い。中国当局は微妙な経済コントロールを強いられ続ける。まさかブレーキとアクセルを踏み違えることはないだろうが、ブレーキのかけ過ぎ、あるいは、かけそびれが怖い。

―中国の外貨準備1兆3300億ドルへ増加。
発表のたびに1000億ドル単位で増えてゆく。2兆ドルなどという数字も、もはや絵空事とは言えない。現状の段階的な人民元切り上げ程度では、焼け石に水ということははっきりしている。問題は、この外準増加も永遠に続くわけではないということ。どこかで臨界点を迎えるはず。そのときのマーケットの反応は為替メカニズムによる調整=ドル安なのか。米大統領選挙をにらんだ保護主義政策発動なのか。後者ならば世界的経済縮小均衡を招く。株も金も聞きたくないシナリオではあるが。

―米国財政赤字本年度2440億ドルから2050億ドルへ減少。
減税―景気浮揚―税収増という伝統的な共和党経済ドクトリンの勝利なのか。ブッシュは得意満面だが、これからベビーブーマーの大量退職が始まることは米国も同じ。健康保険などで最も金食い虫の登場である。これからが正念場と言えよう。

―FRB、総合物価指数も監視。コアは2.2%だが総合指数は2.7%。
この問題も筆者はかねがね疑問に思っていたことだ。アナリストは"変動が大きい"という理由で、食品や原油の価格上昇率(それぞれ3.9%、4.7%)をインフレ指数から排除して安定的な"コア"の部分だけを追う。でも一般個人の皮膚感覚でインフレを感じるのは、まさに食品や原油の値上げである。やはり全体の物価上昇率も重視すべきとの議論は、かねてから英エコノミスト誌なども社説で述べていた。消費者物価上昇率を2.7%と見れば、米国の政策金利5.25%を名目金利として、実質金利は2.55%に留まる。金価格の金利上昇に対する負の反応が鈍い理由をここに見る。

さて、筆者は来週中国出張。北京で3日間のゴールドセミナーが開催される。対象はおもに国内民間銀行の為替、金業務担当者とか企画部門の部長課長クラス、あるいはトレーダーたちだ。人民銀行やSAFEと呼ばれる外貨準備運用担当部門の人達も(出席者リストには載らないかたちで)参加する。その三分の一は若い女性。上海で開催されたときは、一見OL風のお嬢さん三人組が実は人民銀行のチーフトレーダーと紹介されビックリしたものだ。夜行列車で北京から上海まで駆けつけたとのこと。人民銀行の局長さんも50歳前後の女性で、夕食会のメインテーブルを仕切っていた。

これで3回目なのだが 年々彼らの習熟度が高まってゆくことに驚く。今回は日本から開店間もないスタンダード銀行東京支店の(ブルース)池水雄一氏(元三井物産)も加わり、TOCOM関連の話をすることになっている。中国の金投資解禁進行度合いとか外貨準備のドル離れの実態などを肌で感じる機会と思っている。

2007年