豊島逸夫の手帖

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福袋の中味はガラクタだった

2007年7月19日

6月27日付け本欄で"福袋のリスク"を語ったが、その中味はほとんど品質が劣化したガラクタだったというオチとなった。昨日、例のベアースターンズ社が、サブプライムに特化した傘下のヘッジファンドの現価値はほとんど無し、と語ったとの報道である。WSJ(ウォールストリートジャーナル)によれば4月末に比し91%の減価という。(ちなみに数週間前には約50%減と見られていた。)

7月11日付け本欄"サブプライムショック"で述べたCDO担保資産の精査(デューディリ)が進み、その実態が徐々に明らかになりつつあるということか。ベアースターンズ社の株価は一日で2.9%の下落。累積では14%もの下げである。一時はウオール街の名門と言われたのだが。老舗としての評判(レピュテーション)があればこそ、中味もチェックせずに投資家も買ったのだろう。

レピュテーションリスク増大というキツイしっぺ返しが、ベアースターンズ社以外の金融機関にも拡大することが今のウオール街の最大の懸念ではなかろうか。お隣さんの災難を見て、うちは大丈夫なの、という懸念が生まれ、CDOに関してはマージンコールが突きつけられる。貸し手による追加担保請求である。これに答えられなければ資産処分となる。危機的状況の回避のためベアースターンズ社は、すでに3000億円以上を先述のヘッジファンドに注入してきた。

このような背景で昨晩のバーナンキ証言も行われたので、マーケットは彼の"住宅市場懸念"というコメントに対し敏感に反応。NY株は一時150ドルの大幅安。外為市場ではドル大幅安。ベンチマークの対ユーロでは1.38台の過去最安値圏に沈む。もっとも円は金利差ゆえ対ドルで売られる(ドル高)傾向が続いているので、日本人にはドル安といってもピンとこない。今のユーロ、ドル、円の三つ巴を見ているとサッカーワールドカップ地区予選みたいだ。1位は独走でユーロ。2位、3位の座を得失点差でドルと円が争っている構図。

欧米金市場はドル安、ドル高のベンチマークをドルユーロのレートに見るから、金はドル安を囃して買われ8ドルの急騰。670ドル台を回復。

サブプライム問題は利下げ観測を誘い、金利下落の材料にもなるので、その意味でも金には買いが入った。金利を産まない金にとっての懸念材料(利上げ)の後退という流れである。

大局観で見れば、今回のベアースターンズ社の一件は、信用を裏づけとする資産のリスクを顕在化させ、反動として実物資産への回帰現象を産むキッカケとなりうる。同社のヘッジファンドの実質的破綻は、市場全体を揺るがすほどの規模ではないが、レピュテーションリスク懸念はアミーバの如くマーケットの隅々に浸透する。人の口に戸は立てられぬ。その結果、資産価値が大幅に変動する。市場参加者の皆が"うちは大丈夫なの"と言い始めたときが怖い。堅固になった(とされる)金融システムだが、最大のアキレス腱がここにある。

2007年