豊島逸夫の手帖

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原油高とサブプライム不安の同時進行

2007年8月1日

いまの金融市場のリスク要因と言えば、原油高とサブプライム、誰もがこの二つの材料を挙げるだろう。では、それは金市場にどのような影響をもたらしているのか。

ポイントは"同時進行"ということである。原油高に伴うインフレ懸念を芽の段階で摘み取るためには、バーナンキ(FRB議長)としては先手先手で金利を上げねばならない。しかるに、今、金利を上げたら、住宅市場の不安に火を注ぐ結果となることも明らかである。インフレの兆候がちらつくなかで、金利を上げたくても上げられない状況。ここに金市場は買いのキッカケを見い出す。

米国債券市場における信用不安に端を発するNY株式急落は、投資家のリスク回避現象を産み、金の投機的買いの一斉売り手仕舞いを引き起こした。しかし、最近のマーケットは立ち直りが早い。ワンツーのカウンターパンチを貰ってぐらついたところで、すばやくファイティングポーズを取った。

冷静に考えれば、冒頭に述べたような事情があるわけで、金を売り込むことには限界がある。空売りの動きも芽生えたが、深追いは出来ない。少し下がったところで、すかさず買い戻される。

なお、貴金属市場の中ではプラチナの下げがきつい。主力の需要分野である自動車排ガス清浄化触媒に有力な代替技術開発という発表が効いている。金と異なり、市場規模が小さいメタルの怖さである。

プラチナETF発表のときには、過度の期待感から上方に大きく振れた。投機筋には、スリリングな値動きが病みつきになるのだろうが、長期資産保全と言う観点からは、いくらなんでも値動きが荒すぎる。小さな市場で大規模な投機マネーが暴れると、金魚鉢の中に入った鯉みたいなことになる。脱出しようともがけばもがくほど、水槽内の水(=流動性)がはね出して、無くなってしまう。一つの需要セクターに依存する構造も、代替需要開発というウルトラCが決まると、根本的にひっくりかえってしまう。今回の一件は 非常に示唆的な出来事ではあった。

さて、8月は筆者も夏季休暇に入るために 本欄もお休みモードとなります。気が向いたら、更新します。

2007年