豊島逸夫の手帖

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中国要因の発展段階

2007年8月24日

中国が世界経済に及ぼす影響といえば、まず低価格製品の輸出で世界の市場を席捲したこと。原油価格が高騰してもインフレになりにくい理由として、中国製品による価格引下げ効果が指摘された。これを第一段階とすれば、第二段階は、その巨額の輸出収入によってもたらされた経済成長が、ありとあらゆる資源を吸収し、商品価格高騰の主因となったこと。そして、今や、第三段階が始まろうとしている。

サブプライム関連ニュースの陰に隠れて目立たなかったが、中国が資本市場の規制緩和を一段と進めつつあるのだ。今回の措置(8月20日発表)は、国内個人投資家が、中国銀行の口座を通じて香港市場上場株式を取得できるというもの。さらに、この取引に関しては、一人年間5万ドルという外貨保有制限の適用外となる。まだまだ限定的自由化とはいえ、第一歩としての意義は大きい。

天文学的数字の貿易黒字、外国からの投資、そしてホットマネーの流入などで膨れ上がった過剰流動性は、2003年から不動産市場に殺到。そして2006年の年央からは、上海株式市場に矛先を向けた。過熱した国内株式市場は、国際的に隔離された存在ゆえ、今回のサブプライム騒動にも、どこ吹く風である。こんな異常な状況はいつまでも続くはずもない。中国当局がそれを一番痛感しているはずだ。

今回の規制緩和を第一歩に、今後5年間は、中国マネーが世界の金融資産価格を押し上げる状況が加速しよう。

SWF(Sovereign Wealth Fund=国家資産運用ファンド)と呼ばれるが、1兆3千億ドルに達する外貨準備の運用機関設立の動きも拍車をかける様相だ。金市場にもその影響が及ぶことは間違いない。これまで"中国価格"といえば低価格の象徴だったが、これからは金融市場における"中国プレミアム価格"となるだろう。

2007年