豊島逸夫の手帖

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750ドル、3000円

2007年10月12日

昨晩のNYでは750ドルの大台を突破した後、急反落。国内の店頭小売価格は3000円に迫る情勢。先物市場では、買っては売りの投機筋が勢いを得て鼻息が荒い。長期的に見れば750ドルも通過点に過ぎないが、短期的には当面の目標達成感を感じる。市場を過熱感が支配するときこそ、個人投資家は冷静さを保つことが必要。ノルマとか決算期に縛られないのが個人の最大の武器なのだから。

客観的に今回の金価格上昇を分析してみると、やはりサブプライムが震源地だと思う。この問題をきっかけに"リスクの再評価=repricing of risk"が進行中だ。これまでは、世界的に投資家がリスクを軽んじ楽観視していた。リスクの評価が低きに過ぎたのである。例えば、安全性の高い米国債と信用リスクがある社債の利回りがさほど違わないという現象が象徴的であった。これは、マーケットがリスクに対して鈍感になっていた証拠である。それがサブプライムをきっかけに、世界中の投資家がリスクに対して過敏に反応し始めた。金価格上昇もリスクプレミアム拡大のひとつの現象として見るべきだろう。

NY株は高値を更新中だが、投資家は決して楽観的ではない。そこで、株も買うが、リスクヘッジとして金も買っておくという発想が生じる。その結果としての株、金、同時高値更新現象といえよう。筆者の卑近な例では、株式セミナーに呼ばれ、リスクマネジメントとしての金を語る機会が増えたことが示唆的と感じている。

金の初級講座では、金価格の決定要因として"不安係数"などという概念が説明される。要は、マーケット全体が不透明なときに金価格が上がる傾向が強いということだ。株、債券、外為市場のコメンテーターが"神経質な地合いで方向感に乏しく波乱含み"というような、なんの参考にもならない表現を使わざるを得ないときに金価格が上がる傾向と言ってもよいだろう。

セミナーでこれから金を買っても遅くないかとよく聞かれる。筆者の答えは野球に喩えて5回裏くらい。ただしホームラン狙いはいけない。高校野球式に内野安打とバントで着実に1点ずつとってゆくような買い方が肝要だ。750ドルという段階は、5回裏のインニング内で見れば既にツーアウト、ランナー無し。それほど気張る局面ではない。

なお、本日の日経金融新聞一面に"金が米国を見放す日"という刺激的見出しの記事が載っている。この新聞は個人投資家には馴染みの薄い刊行物だが、日経記者たちが署名入りで本紙より自由度が高く思うところを書いているので面白い。

最後に、WGC単独主催の緊急ゴールドセミナーを企画発表したところ、100名定員のところ400名を超える応募があり、急遽、会場を新宿NSビルから その近所の新宿住友ビル(定員200名)に変更しました。それでも半数近くの方々は抽選で外れてしまうので、ご容赦ください。また第二弾を企画します。

2007年