豊島逸夫の手帖

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連休中も続騰

2007年11月26日

先週774ドルまで急落後、急反騰を演じた金価格だが、23日金曜日もNY市場は飛び石連休の間の超薄商いのなか値だけ飛ばし、20ドル近い急上昇を見せた。週を終わってみれば820ドル台を回復。ふたたび100ドルに接近中の原油価格に対する出遅れ感を取り戻すような展開だ。

相変わらず、24時間で20ドル前後の乱高下は当たり前の世界ゆえ、今週もプラスマイナス20ドル幅は常に覚悟したうえで臨まねばならぬ。完全な投機相場だから、台風の荒波に挑むサーファーのような真似はしないほうがいい。

潮の流れとしては、筆者は下値を780ドル、そして750ドルも視野に入れてきたが、どうやら、そこまでは待てずにバーゲンハンターの買いが入るようだ。世界中の投資家が"下がったら買う"と言っているときは下がらないもの という例か。774ドルまでの調整を経た後なので、前回の800ドル越えよりマシだが、日々の高ボラティリティーを見るに、まだまだ固まったとは言えない。

もうひとつの焦点が円高。これは、筆者の意見は変わらず。ドル円は構造要因(サブプライムや経常赤字)によるドル売り要因と、絶対的金利差(短期ドル金利4.5%、円0.5%)というドル買い要因の綱引き。さらに、構造要因にしても、巨額の対外赤字を抱える米国と800兆円の財政赤字を抱える日本の"弱さ比べ"。両国とも弱さに於いてはいい勝負であり甲乙つけがたい(情けない話しではあるが...)。その間隙をついて漁夫の利を得ているのがユーロ。

足元では、円キャリーが一巡し、シカゴ円先物ポジションもロング(買い持ち)に転じた。モメンタム(勢い)は明らかに円高ドル売りにある。しかし、マーケットの大勢が円高という同方向で一致したときが円安への転換点となろう。振り返ればつい数ヶ月前に123円のときに市場の大勢が円安という同方向で一致。そこが円高への転換点であった。108円―123円という為替のレンジは筆者にとって説得力がある。

さぁ、皆さん、連休気分で緩んだ気を引き締めて、シートベルトは低めにきつく。客室乗務員(=トレーダー諸氏)も着席して乱気流に備え、キャプテン バーナンキの指示を待ちましょう。行く先は、12月11日、FOMC!

なお、先週22日の日経朝刊3面"ドル不安震源、マネー変調"の記事中に金市場と他市場の比較図があります。参考になりますから見ておくとよいでしょう。

最後に、前回の原稿"マーケットが忘れかけていたこと"は反響が色々ありました。

"サブプライム問題の本質は米国経済の赤字体質、という冒頭のひとことで目が開いた。巨額追加損失発表合戦などは所詮トカゲのシッポ"というコメント。

"サブプライムの次の苦い体験は毎月分配というお小遣いつき大型投信かも、という最後のひとことに、皆が、とくにFPなどが、心の中でヤバイかなと思っても口にできなかったこと"というコメント。うちのスタッフの一人がつぶやいていました。"CDOのときもそうだったけど、彼のああいう一言って変に当たるから不気味だ"と。でも、一番の問題は、そのヤバサを多くの個人投資家が理解せずに保有していることだと思います。

2007年