豊島逸夫の手帖

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原油上昇に失速の兆し

2007年11月29日

99ドルまで行き、あと一息のところで100ドル突破ならず。その後、原油上昇モメンタムが急速に萎んでいる。

昨日は、サウジ当局が200名ものアルカイダ一味を"原油施設破壊計画"の容疑で拘束の報道。この出来事の日時が昨日なのか一ヶ月前なのか明らかにしていないとはいえ、少し前なら原油100ドル突破の格好の材料になりそうな話。ところが、昨晩のNY原油先物市場はこれを無視し続落した。100ドルが日々遠くなる。

原油続落のもう一つの要因が、米国景気後退懸念の台頭。中東関連地政学的リスクは供給サイドの波乱要因だが、景気後退は需要サイドのマイナス要因である。

これで原油価格は今週に入り7.3%の下落。それを好感して、米国株はダウ300ドルを越す急騰。もっとも、こちらは金融株売り、ハイテク買いのポジションを膨らませていたファンドの金融株ショートカバーによるところが大きい。

12月11日FOMCの再々利下げが織り込まれ、議論は下げ幅が25bp(=2.5%)か50bp(=5.0%)かというレベルになってきていることも株には追い風。とはいえ、サブプライム信用不安に終息の気配は全く感じられず。所詮、ショートカバーラリー、あるいはベアーマーケットラリー、つまり空売りが買い戻されただけとのフロアの感触だ。

その中で、筆者が一番気になるのが、"米国リセッション=景気後退論"。大統領選のディベートを聞いていても、これまでのイラク中心の議論から、経済問題へのシフトが顕著だ。"サブプライム犠牲者の低所得者を救済するためにウオール街は巨額ボーナスの一部を寄付しろ"とか"変動金利ローンを低金利に凍結しろ"とか結構過激な主張が飛び交っている。

さて、金価格は790ドル近くまで続落後、800ドルを挟む展開。じりじり水準を切り下げている。ドルが110円まで反騰し、原油は続落、株は急騰、そこで金は売り、と昨日同様、"市況の法則"どおりの下げである。

原油100ドル、金850ドルの目標が年内達成困難と見切り、商品市場全体の流れが売りモードに転換しつつある気配が感じられる。筆者に言わせれば、これまでがはしゃぎすぎで、徐々に理性が戻りつつあるということだが。

金価格高値更新には、12月11日の利下げ幅が50bpとか、イランに対する武力行使とか、ユーロが対ドルで1.50の大台突破などの強烈なインパクトが必要であろう。

2007年