豊島逸夫の手帖

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株は見切り売り、金は利食い売り

2008年1月18日

NYダウは300ドル超の下げ。これで今年に入り12日間で6回目の200ドルを超す下げが続く。Ugly ugly.....

市場の不安心理指標であるVIX(ボラティリティー インデックス)は、昨年8月、11月につけたピーク30に近づく。

昨晩の出来事は

―バーナンキ議会発言。立場上、R-word(景気後退)は口を裂けても言えないから、growth below target(経済成長、目標に及ばず)という苦肉の表現。FRB議長からの励ましの言葉を希望的観測で期待していたマーケットには失望感流れる。

―財政出動10兆円相当と(最低)0.5%の金融緩和の連動でなんとか乗り切ろうという米政府の思惑。マーケットは懐疑的。

―特にショックだったのが、ムーディー、債券保証会社の格付け下げに動くとのニュース。この分野の大手AMBAC、MBIAの株価は1日で51%、31%の暴落。彼らは、CDS(債務不履行リスクを引き受けて手数料を稼ぐ商品)を売ることによって、急成長してきた。格付け会社から得たトリプルAを看板に、うちなら不履行債務を全額引き受ける財務力あり、とセールスしてきたのだ。その根本が、格下げで崩れる。そうなると、彼らが保証してくれていることを前提に資産評価したCDOも、再評価を迫られる。そうなると、たとえば、メリルが昨晩115億ドルの追加損失を発表したが、それは債務保証されている前提の計算だから、やり直さねばならぬ。さらなる追加損失の可能性。それから、そもそも債券発行会社にトリプルAを与え、同時に彼らからコンサルタント業務も請け負っていた格付け会社も、"なれあい"の誹り(そしり)を受ける。まさにリスクの連鎖である。

―米景気後退については、地域的バラツキが激しい。経済成長率が完全にマイナスに転じた州はカリフォルニア、フロリダ、ネバダ、アリゾナ、ミシガン。最初の4州は住宅価格急落、ミシガンは自動車産業を抱える。その次に、マイナス目前の州にミネソタなどの中南部が控える。

さて、金市場もリスクの連鎖。株安で毀損したポートフォリオ価値維持のために金売りに走る動き。24時間の価格チャートの波形も見事な調整局面の図。880ドル台から870ドル台へ。しかし、870ドルで随分下がったと感じてしまうほどに相場感覚も麻痺してしまった、と自戒を込めて感じる。

NYのCNBC"オープニングベル"にGFMS社会長のフィリップ クラップが出ていた。米国も日本も同じだね。株式の番組から金専門家に急にお声がかかっている。

曰く"GFMS社見通し、年前半は平均価格840ドル。アジア中東の実需急減による調整局面。年後半は1000ドルがclear possibility=はっきり可能性あり"とのコメント。でも、金は結局バブルでしょ、とのキャスターの突っ込みには、"断じてバブルではない、ファンダメンタルズの裏付けある長期投資マネーの流入が宝飾需要の減少を上回る構図だ"との答え。
ははぁ...、一昨日の深夜に同社CEOポールが我が家のスカイプ鳴らして意見を聞いていったのは、これか、と納得。

有力各社の金価格見通しを比較すると、強気のベクトルは一致しているが、短期的乱高下のタイミングについては、大きく意見が分かれる。当たり前だよね。例えば、ブット暗殺が、あの時期に起こるなんて誰が想像できた???

PS
本稿執筆中にNYSE(ニューヨーク証券取引所)、AMEX(アメリカン証券取引所)を買収の速報流れる。ETF、オプションが"ウリ"のAMEXを傘下に収め、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)に対抗か...。

2008年