豊島逸夫の手帖

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日本時間1月31日午前4時15分(FOMC発表時間)

2008年1月30日

金市場はFRBの追加利下げ幅を50bp(0.5%)と織り込んで、連日の史上最高値更新が続いた。25bp(0.25%)あるいは見送りとなれば失望売りは必至。

先週22日には、850ドル台で調整モード入りかと思われた金価格が、緊急利下げで情勢は一変。930ドルの史上最高値を更新するまで急騰を続けた。それほどに、"金利を生まない"金にとって、利下げは追い風。利上げは天敵。もちろん、ドル金利低下=ドル安=ドルの代替通貨としての金買いというシナリオが大前提にある。

金にはサブプライム発の信用不安から"質への逃避"マネーも流入している。ここでは米国債が一番の受け皿であるが、インフレ懸念を嫌うマネーは(インフレに弱い債券より)金を選択する。

しかしながら、米国債市場は"債券バブル"に近い様相だね。なにせ2年もの利回りが半年前は5%だったのが、いまや2.2%(これはFFレート、利下げの落とし所のベンチマークともみられているが...)。10年ものも5%台から今や3.6%。要は米経済リセッション観測が高まる中で、インフレ懸念後退で債券にマネーが流れやすいセンチメントなのだ。しかし、ここで仮に原油が反騰し始め、ふたたび100ドルを窺うような状況になったら、債券に逃避したマネーも心中穏やかとはなるまい。劇場の非常口に一斉に観客が殺到する"劇場シンドローム"が起きても不思議はない。すでにサブプライムで毀損した米国債券市場だが、米国債バブルもちょっと心配。

さて、バーナンキさんの仕事も大変。原油90ドル時代に金利を大幅に下げ続けるという事実は、冷静に考えれば、かなり危ない賭けだから。まずはサブプライムの低所得者救済、リセッション予防に金融政策の優先順位を置いたわけで、ここはFOMCステートメントでも、もっとはっきり述べて米国民の不安を緩和すべきと思う。つまり、"国民の皆さん、まずは経済減速を食い止めるために利下げしますが、インフレを忘れたわけではありません。利下げ効果が見え次第、利上げに転換する用意もありますよ。"というような意志表示でもあれば、随分と米国民も投資家も安心するのではないだろうか(マーケットのプロたちは利下げすれば安心する単純な心理構造だけどね)。

金価格急騰は、その投資家の不安感がリスクプレミアムの拡大となって現れている現象だと思うのだ。

さて、本日の日経朝刊"マーケット総合面"でアンコール セミナーの告知をしました。前回抽選に漏れた方は優先しますから、その旨お書きください。また、参加者の半数以上が私のブログを読んでいてくださるので、今回は志田編集委員とも相談して、質疑応答の時間も設けることにしました。会場が広いので、質問のある方はあらかじめ紙に書いて受付にお渡しください。全部にお答えできる時間はありませんが、時間の許す限り二人で"本音"で答えてゆきます。いつもの行司役 池崎美盤キャスターが都合で参加できないので寂しいですが、筆者と志田編集委員は長い付き合いで、気心知れた仲です。二人で喫茶店でだべっているのを立ち聞きするくらいの感じで気軽に聞いてください。冷静な語り口の彼ですが、ときどき ドキッとするような大胆なコメントしたりして、筆者も良い意味で刺激を受けることがあります。

開催日2月11日までにはFOMC、米GDP、米雇用統計などを経て、マーケットの景色も随分と変わっていることと思います。当然、筆者の講演内容も前回と同じとなるわけもありません。たぶん、前日まで資料作成していることでしょう。お楽しみに。

2008年