豊島逸夫の手帖

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宴(うたげ)の後

2008年4月15日

酒好きの読者の皆さん。二日酔いになった時、どうしますか?割れるような頭痛にひたすら耐える?もう酒は控えると節酒禁酒宣言する?あるいは迎え酒??今の米国経済は、住宅バブルパーティーを飲めや歌えで楽しんだ後の、まさに二日酔い状態と言える。それも吐き気を伴う酷い症状。

そこでお馴染みバーナンキ クリニックに駆け込んだところ、施療は"迎え酒"。"米ドル通貨"という点滴を大量に注入され、"これでまた飲んでってくれ"。おまけにブッシュ町長からは、医療補助として大人一人1200ドルの(税還付)小切手のプレゼントつき。共和党のサプライサイド経済理論によれば、これで居酒屋さんも薬屋さんも儲かるから町の経済全体としてはプラスになる。景気が良くなれば、二日酔いなんて吹っ飛ぶさ、という考えである。

でも、別のクリニックにセカンド オピニオンを聞くと、"いや、ここはまずは遊びを控えて、節酒すべきだ。"と厳しいストイックなご意見。それは言われずとも分かっているんだけどね。夕暮れ時になると、またぞろうずうずして、一杯だけと言い訳しつつ、結局二杯が三杯。(かくいう筆者も医者から酒飲むと不整脈が出ると指摘されつつ、飲みだすと気が大きくなり、てやんでぇ、不整脈がなんだってんだと開き直り、後で結局、大後悔という経験を何度したことか...)。

米国人とて同じこと。今でこそ相当酷い二日酔いで、自己反省の真っ最中だが、喉元過ぎれば、どうなることやら。ただ、今回の二日酔い(景気後退)の度合は、これまでのリセッションより相対的に軽微な症状なのだ。昨年12月からの米国の月平均雇用減は約80,000人。過去の景気後退局面では150,000-200,000人が普通であった。今回は、新興町の中国人やインド人の皆さんがすっかり独り立ちして色々励ましてくれるし、中東村のお金持ちは"お薬代に"とおカネまで用立ててくれるだから、立ち直りも早いよ、とはバーナンキさんのお見立て。

でも、セカンドオピニオンはもっと悲観的。米国人は本気で禁酒道場にでも通わないといかん、という意見。とはいえ、本当に禁酒されれば、それはそれで米国GDPの7割を消費が占めるゆえに、困ったことになるのだ。やっぱり米国人の皆さんにも"ほどほど"に遊んでもらわないと町全体が活気づかない。この"ほどほど"で止めるというのが実は難しいのは、先ほども述べたとおり。結局、新興村とユーロ村の皆さんに、もっともっと頑張ってもらわないと。日本村だけが村八分状態なのも困ったことなのだが...。

サブプライムとは、低所得者向け住宅ローンと説明される。そこで日本人が"低所得者向け住宅"としてイメージするのは"うさぎ小屋"に家族4名がひしめく姿。ところが、かの国のサブプライム差し押さえ住宅を見るに、5DK2階建て広い庭つき。プールがないから低所得者用?と、つい皮肉も言いたくなる。だから、筆者はサブプライムでホームレスになってキャンピングカー生活している人たちに同情できない。5DK庭付きを 頭金なしで、ローン金利も最初の3年は3%、そののち6-12%に跳ね上がるという設定。いくらなんでもその条件を知らなかったと言わせないよ。

最後に筆者がちょっと心配なこと。それは、町民の住宅バブルパーティーの結末に懲りて、町役場が、禁酒法とは言わないまでも、酒購入について色々規制を導入しようとの動き。あくまで飲酒は自己判断、自己責任の前提に留めたいものだ。

2008年