豊島逸夫の手帖

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初心者向け原稿:金って投機なの?

2008年4月17日

最近はこのコラムも新規読者が急増してきたので、これからは初心者向け原稿も出来るだけ書く必要ありと感じています。

さて、日本では"金"というと"投機の対象"というイメージが強く残っています。新聞の見出しでも"投機資金 金市場へ流入"というように報道されます。たしかに先物市場で短期的売買を繰り返して利益を得ようとする投機家が多いことは事実です。でも、それは全体の一部にしかすぎません。

金の需要の最大の部分は、中国、インドなどの女性が購入するゴールドジュエリーで、需要全体の7割前後を占めます。そして、パソコンや携帯の部品としてもかなりの金が使われています。

資産として買われる金の分野も、投機家だけではなく、欧米の年金基金などが参入中です。個人の積み立てた大切な年金の運用を任されたプロが、その一部を"金"で運用しているのです。もし、金が"投機"であったら、そんなことが許されるはずもありません。年金で運用される金は、何と言っても長期保有が大前提です。

原油、穀物価格高騰のおり、日本の年金でもインフレに対する長期的備えを講じる動きが出始めたと日経でも報じられていますが、欧米では数年前からすでに、その手段として金が買われ始めているのです。金利を生まない金を購入するなどということは、これまでの年金の運用では考えられないことです。逆に言えば、それだけインフレ懸念が高まっているということでしょう。

考えてみれば、過去20年間も、ディスインフィレ、デフレの時代が続いたので、インフレは死語となり、誰もインフレに対する備えなど考えてもみなかったのですね。その結果、私たちの大切な年金は、インフレには真っ裸の無防備な体制のままでした。これは、考えてみれば怖いことです。年金受給者にとって、"消えた年金"などの制度問題もさることながら、月々受け取る年金が物価上昇で目減りしてゆくことは、直接生活に響くからです。

その年金の運用成果の現状は、一言で言って株式相場次第。株が良ければプラス。昨年、今年と悪ければマイナス。こういう"年金問題"は、非常に深刻なのですが、なかなか活字や映像になって一般個人に伝わることがありません社会保険事務所の失態のほうが分り易いですからね。

でも、欧米の年金はいち早く、株、国債以外の新たな資産にも運用を分散させています。株がダメでも、他の資産で全体の目減りを食い止めるという発想です。金の売買も、欧米では証券取引所で、株や債券と同じように売買される時代になっています。偽ロコロンドン取引などが横行する日本とは、だいぶ格差がありますね。すでに日本でも金ETFが証券取引所に上場されるという新たな動きも出始めましたが、市場の整備も急速に進行するでしょう。そのうちに 日本の銀行の金庫にも、日本の年金が買った金塊がうず高く積まれるという現象が現実になりそうです。

金はリスキーと言われますが、インフレの備えが無いことのほうが、もっとリスキーだという逆転の発想が、今や新たな潮流となりつつあります。この新潮流は、なにもプロ限定の話ではなく、一般個人にも言えることではないでしょうか。

2008年