豊島逸夫の手帖

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第二ラウンドのテーマは"インフレ"

2008年5月22日

信用収縮、ディレバレッジで20%近くに膨らんだファンドのキャッシュポジションが、ぼちぼち動き始めた。まず原油に来て、出遅れ感のある金にも回って来た感じ。金は930ドル台に。

原油は、長期的供給懸念から先物の買いが膨らんでいる。
2016年12月限 142.09ドル
2015年12月限 140.05ドル
2014年12月限 139.27ドル
2013年12月限 137.97ドル

原油の先物価格は、市場の先高観先安感に左右され、現物より割高(コンタンゴ)になったり、割安(バックワデ―ション)になったり、ころころ変わる。なお、金の先物価格は金利とリースレートで決まる理論値に収まり、乖離(かいり)すると裁定取引が入り理論値に収れんする。余談だが、ETFを組成した場合に、金価格は連動が容易だが、原油価格は連動しきれず、トラッキングの誤差が大きく出がちだ。

現在の原油マーケットの特徴は、長期的供給不足を見込んで先高観が強まっていること。そんなこと言ったって、埋蔵量は幾らでもあるじゃんというかもしれないが、石油会社の社長さんの立場に立てば、もう十分儲かっているのだから、ここは生産量を増やすより、品薄感を煽ったほうが得策というもの。さらに産油国のオイルマネーの立場に立てば、原油で儲かったカネで原油先物を買えば二重に儲かる仕組みだ。

石油のユーザーの方が、5月9日の原稿にも書いたように、トラクターからラクダに切り替えるなど涙ぐましい省エネ努力しても、目先はとても太刀打ちできないよね。(でも、チリツモで、長期的には節約がボディーブローのように効くとは思うけど)。

ペトロ、ペトロ、ペトロ。昨晩発表のFOMC議事録もインフレ懸念で利下げ打ち止め宣言とも読める内容。これ、本来であれば、金の売り材料、ドルの買い材料のはずだが、マーケットは逆の反応。金は上に行きたがっている。原油が130ドルまで来ると、いかに原油依存度が低まり、グローバリゼーションで安価な労働力が流入し、インターネット情報革命で経済の生産性が向上したとはいえ インフレ懸念による金買いが出てくるね。その意味でも一昨日の米国卸売物価指数のコア(エネルギー食品を除く)が急上昇したことはエコノミストを驚かせている。とうとう諸物価にまで原油高が浸透してきたことが、庶民の生活感覚だけではなく、統計的数字にも表れはじめたのか、ということで。

株も金も含め、市場全体で、2008年第二ラウンドのテーマは、"インフレ"に決まった。このラウンドの開催地、というかマーケット激動の震源地は中東である。

ということで今週日曜のWGC単独主催セミナーでは、中東の話に時間を割きたいと思います。"砂漠の中に、なぜ、世界最大のアルミ精錬施設が?""王族支配下の雇われ外人部隊アブダビ政府系ファンド""オイルマネーとチャイナマネーの接近"など、話題は尽きません。

2008年