豊島逸夫の手帖

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合成の誤謬

2008年9月4日

世界的経済減速基調の中で株も商品も同時下落。債券は信用収縮で機能不全。外為市場はドル、ユーロ、円の弱さ比べ。不動産はサブプライムで凍りついたまま。グローバルなおカネの流れが全く見えない。

マクロ経済的には、ドーハラウンドも決裂し、保護主義へ傾く国際経済である。主要国が自国通貨安を願うという切り下げ合戦。行く先は世界経済の縮小均衡である。

Lose-lose=どこへいってもダメなときは、じっとしているしかない。倹約、節約に励み、生活水準を2-3段階下げるしかない。

タンスの肥やしになっているゴールドのジュエリーを換金して趣味の資金に充てるのも一つの方法だろう。でも、今、日本中で大はやりの"金プラチナリサイクル"現象。これが合成の誤謬の典型なのだ。(この用語については2007年1月23日本欄参照)。

金価格が上昇し、個人投資家が手持ちゴールドの換金売りに走ることは合理的な投資行動である。ところが、国全体として見ると、稀少資源のゴールドを輸出し、中国などに売り渡す結果となっている。資源獲得合戦の中でサッカーのオーンゴールみたいな現象である。

貴金属業界の一部では金塊を輸出しているのに、他方では業界30社が結集して日本沿海海底金鉱脈の探索に当たるという。稀少資源獲得という国益と、リサイクル金輸出という行動は明らかに矛盾している。リサイクル金はみすみす輸出などせずに、公的機関が備蓄すべきではないか。

なお、今日は日経CNBCのデリバティブ番組(夕方5時過ぎ、再放送夜8時過ぎ)で金価格動向の話をします。

2008年