豊島逸夫の手帖

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判決の日 近づく

2009年1月23日

更新が途切れがちなのは、なにか周囲が慌ただしいから。筆者のウオール街の友人たちは、皆、personal kitと言って、会社の身の回りのものを小さな箱に入れて、スタンバっている。いつ、解雇通知が来るかもしれない。そのときは、即日、その箱を持って退社することになるのだ。

今回はウオール街に加えて、欧州の友人たちにも危機感が強く感じられる。大西洋の両岸で同時進行の危機的展開だ。米国はオバマ新体制で危機打開に向けて本格的に動き始めたが、EU圏はまだ内部統一出来ず、数歩も遅れを取っている。

まぁ、はっきり言えば、GM、UBS、そしてAIG。この三社に、早晩、判決が下りそうな様相である。これにBofA(バンク オブ アメリカ)の名前も浮上してきた。

オバマ就任直前までは新大統領への期待感に湧いていたマーケットが、いざ就任式が終わった途端に、"材料出尽くし"というのだろうか。いよいよ新大統領就任まで先送りしていた諸々のことに最後の判決が下る、という緊張感(というか不安感)が出てきたのだ。

シティーやRBS(ロイヤル バンク オブ スコットランド)も国有化されそうな雲行き。すでに実質的には国有化に近い株式保有構成になっているけど。まぁ、判決と言っても、執行猶予付きになり、最悪の実刑=破たんは当面回避することになるだろうが、株主には株安、従業員にはリストラという痛みを伴う判決になることは間違いない。

金価格について言えば、金融危機はたしかに買い材料なのだが、EU圏への懸念からユーロ安、ドル高に振れがちなので、ストレートに上げとはなりにくい。中国の経済成長率6%台へ急低下のニュースもマイナス材料である。

ヘッジファンドには大型破たんがいつ出てもおかしくない状況だし、そうなれば保有資産売却処分の波が金市場にも及ぶであろうし、これを考えるとプロの読みとしては、ホイホイと買いに乗れない状況なのだ。

なお、"為替市場のVIX指数"と化した感のあるドル円が、円高ドル安に振れることも、欧米金融市場の不安感を象徴していると言えそう。

2009年