豊島逸夫の手帖

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ガイトナー ラリー パート2

2009年2月12日

建国記念日前日に退社した極東時間帯では900ドル以下に下がり、弱気論が市場に充満していた。それが欧米市場でムード一変。(慣れたものの市場のセンチメントは、ホント、猫の目のように変わるね)。910、920、930、そして940ドルと、ほぼ一直線で買い上げられた。その原動力は、相変わらず金ETF。毎日のように10トン単位で残高が増えてゆく。Serious money=機関投資家の金買いが本気になったみたいだ。

全体として見れば、"新興国売り 対 欧米買い"の構図は変わらず。ケタ違いの資金量を持つ欧米勢が、相撲で言えば、巨漢バルトみたいな取り口で、ひたすら力で吊上げてゆく。

マクロ経済環境としては、なんといっても発表された追加金融安定化策に対する失望感が、金買いの引き金を引いた。昨年ベアスタ救済で活躍して以来、読者ご承知のように、筆者はガイトナー ファンなのだが、連日の記者会見などでの彼の語り口と見るに、まだ目が泳いでいるし、落ち着かないね。個人的には、まだ最初なのだから長い目でみてあげようよ、と言いたいところだが。ただ、マーケットに過度の期待感を抱かせて、蓋を開けたら中味はほとんど無かったというのは、いかにもまずかったね。前回の更新では、オバマの期待感が高まれば金は売られると書いたが、その反動で金が買われている感じだ。

昨年11月25日に本欄で"ガイトナー ラリー"を書いたときには彼への期待感で買われた。それがガイトナー ラリー パート2では、彼への失望感で買われている。でもさ、どうみても、不良債権の実勢価格など、誰にもわかるはずないじゃん。最後はオバマが、エイヤーの掛け声で政治的決断するしかないよ。

それにしてもサブプライム問題解決は遅遅として進まないね。著書("金を通して世界を読む")31-32ページに、サブプライムの問題点を簡潔にまとめたが、今、読み直して見ると、どれもほとんど目ぼしい進展がないことに驚くばかりだ。

それやこれやで940ドルというのは昨年7月以来の高水準。930ドルの上値抵抗線を突破すれば950ドル。そこまでくれば1000ドルも視野と以前書いた覚えがあるけれど、次の焦点は950ドルだね。

金という小さな池に、利根川みたいな株、債券の主流から流動性が流入している。その運河の役割を果たしている金ETF。小さな池の水位は上がるばかりだ。集中豪雨でも降ると手がつけられなくなる。年金参入も、主流の大手カルパースなどはこれからだしね。

なお、金急騰に呼応するかのように、著書の4刷りが決まりました。まさか、4刷りまでくるとはねぇ...。地味な作りの本ゆえ、想像もしなかった。アマゾンの読者書評を見ると、ほんとに本書の趣旨を感じて読んでくださっていることに感激。↓

http://www.amazon.co.jp/review/product/4532353386/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?%5Fencoding=UTF8&showViewpoints=1

2009年