豊島逸夫の手帖

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1000ドルへの助走開始

2009年2月13日

930ドルの上値抵抗線を突破した勢い(モメンタム)で950ドルまで到達した。ここからは、かなりの戻り売りも待ち受けるが、1000ドルの大台も視野に入ってくる。

今回の金急騰にはいくつかの特徴がある。一言で言って、ETF&欧州主導型と言えようか。

― 金ETFの増加ペースがハンパではない。これまで一日10トン急増してビックリと書いてきたが、ここにきて一日40トンという驚異的な残高増加。昨日も同じ言葉で表現したが、serious money=機関投資家マネーの流入が"本気"である。

― そして欧州個人投資家の参入。こちらも現物及び現物裏付けのある商品を100トン以上買い上げている模様。金貨購入ペースも急ピッチである。その背景は、勿論、EU圏経済不安。ユーロ建て金価格は過去最高値を更新中。

― 昨晩は原油が安値を更新する中で、金は高値を更新。金融不安=景気後退=需要減をもろに受けて下落する原油。対して、質への逃避マネーの受け皿としてマネーの側面が顕著な金。対照的な値動きである。

― アジア中東は、新規買いどころか売り戻しラッシュ。現地の現物需給はジャブジャブである。"新興国売り 対 欧米買い"の構図。中東の個人が売り戻した金がロンドンに空輸で戻され、地金に鋳直されて、ETFの裏付けの金としてロンドンのカストディアン金庫に保管される、という流れだ。

―マーケット全体で見ると
◎今、買われているもの:米国債、金、そして円。
いずれも"比較的安全な資産"として買われている。日本人の感覚としては、円が安全資産!?と思ってしまうが、欧米市場では、そう見られているのだよ。
◎今、売られているもの;株、ドル、ユーロ、そして原油。
今の投資家心理を象徴するような構図だね。

これから1000ドルのハードルをクリアする"走り高跳び"が始まるが、そのハードル越えは決して容易ではない。何回か試技に失敗しつつ挑戦を続けることになろう。

2009年