豊島逸夫の手帖

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金売却で4兆円損した欧州中銀

2009年5月8日

話題の米銀ストレステストの結果がやっと公表。あれだけ数週間に亘りマーケットが大騒ぎして、様々な憶測が流れ飛んだ後なので、アンチクライマックスという感じで特に感慨も無し。なんかストレステストが目的みたいになってしまっていたが、あくまで手段。人間ドック受けたからといって病気が治るわけではない。

それより、昨日は、米国債入札不調に終わったことで、債券市場発の悪材料が注目された。やはり、米国債の大量発行は消化不良となりそう。ドル長期金利も3.25%まで上昇。イールドカーブがsteep=斜度が上がってきていることは、市場の長期インフレ懸念が徐々に高まりつつあることを示す。

フィナンシャルタイムズ紙の一面にデカデカと金地金の写真入り記事が出ていたので、なんだと思ったら、"90年代に公的保有金を売りまくった欧州系中銀が、安く売却したことで、ざっと4兆円損した"という内容だった。彼らが売った総量は3800トン。金額にして5兆5千億円ほど。それに、得べかりし売却益が4兆円、ということだ。要は、今にしてみれば半値で叩き売ってしまったということか。(なお、金から債券などに乗り換えたことで利息収入が1兆2千億円ほどは得られたという。)

最大の損失を出したのはスイス。1550トン売却して1兆9千億円ほど損した。次いで英国が5千億円程度。スイス中銀のコメントは一言、"もう金は売りません。"そうは云っても、ポートフォリオ理論からすれば、外貨準備の中の金の割合が60-70%というのは、いかにも多すぎという議論も根強い。たしかにその通りだと思う。やはり、60-70%も持っている国から1%前後しか持っていない中国などに公的保有金が流れるのは当然の動きか。21世紀の金は、西から東へ流れる。

ゴールデンウイーク直前から会社のサーバーが不調となり、やっと昨晩遅くに復旧したので、1週間ほど離れ小島状態であった。たまったメールをダウンロードしてみれば、来週はまたまた中国出張(これは食い倒れ旅行ではなく、マジな仕事)。そして、純金積立を中国に次ぎ、欧米で導入の話も出てきて、ロンドンNYまで指南役として出向かねばならぬ。そのうえ、WGC東京事務所の再拡張のプランまで社内で浮上して、もう勘弁してほしいよ。頭はひとつあればいいけど、首から下にもう1セット手足が欲しいね。個人的には、もっと本を書きたかったのだけど、果たしてこんな状況で出来るかな。セミナーも今年は大幅削減宣言していたけど、最低限のお勤め果たすだけでも結局6月の週末は埋まってしまった。なんか、最後は愚痴っぽくなったね。ゴメンナサイ。

2009年