豊島逸夫の手帖

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マーケットの日本の総選挙に対する反応

2009年8月27日

日本の総選挙を見る欧米の目は冷めている。今週号の英国エコノミスト誌の社説―
「LDP(自民党)は敗色濃厚だが、This would only be good for Japan.=これは日本にとって良いこと以外の何物でもない。」「LDPは冷戦時代の遺物。」「ベルリンの壁が崩壊したときに、すでにその運命は決していた。」「LDPの日本経済成長への貢献ストーリーは、古代史の分野に入る。」等々、手厳しい。

翻って、DPJ(民主党)については、「政権交代に準備不足。」「鳩山代表は、小泉構造改革を攻撃するだけではなく、経済をさらなる規制で縛ろうとしている。今の日本経済の窮状の原因は、小泉構造改革というより、そもそも失われた10年に遡る。」「DPJの官僚制度への挑戦は評価できるが、どうも経済成長より所得の再配分の方が重要だと勘違いしていることに危うさを感じる。」要は、経済のパイが大きくならずに共食いしても、未来のヴィジョンは開けないということだろう。

この種のコメントは、欧米の連中からよく聞く議論だ。「氷山に激突したタイタニックの中で、散乱したデッキチェアーを並べ直そうと飛び回っている」という表現もよく使われる。

欧米から見ると、財政も年金も破綻状態なのに、高速道路を1000円とかタダとかの議論はあまりに近視眼的に映るのだ。ちなみに高速道路を1000円に割り引くことの財源は、霞が関の埋蔵金から来ている。結局、納税者負担なのだ。虚しい。

フィナンシャルタイムズ紙も社説で日本の総選挙を論じていたが、DPJのマニフェストをfantasyファンタジー(夢物語)の一言で斬っていた。ばら撒きを誰が払うの?という疑問である。

総じて、LDPになってもDPJになっても、日本経済の根源的問題、すなわち先進諸国間で最悪の財政赤字とか高齢化社会の中の年金問題は解決されない と見ている。だからマーケットは日本株をトレーディング(短期売買)の対象としており、長期保有にはそう簡単には踏み切れない。腰の入ったガイジン買いは期待できないということだ。

ドル円に関していえば、米国経済の窮状もどっこいどっこいなので、日本に対する悲観論が短絡的に円売りとはならない。悲観が強いほうの通貨が売られる。総選挙後の外為市場が円買いモードならば、この材料は無視されるだろうし、円売りモードならば、ここぞとばかり材料視されよう。

英国エコノミスト誌のもうひとつの社説は、UかVかWか。経済回復シナリオについて書いてある。同誌の見立ては、底がフラットで、ながーく憂鬱な時期が数年続く、gloomy Uだそうである。

なお、今日27日午後5時からの日経CNBCのデリバティブ番組に生出演します。再放送は同日午後8時過ぎから。

2009年