豊島逸夫の手帖

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おそ松くんが金相場について語ったら?

2009年9月29日

円高が88円台まで振れたところで、すかさず投機筋の手仕舞いと見られる円売りが入り、相場は一休止。株もドル円も金も原油も、最近の相場は利食いが早い。動きが細かい。ファンドマネージャーもリスクを取るには取るのだが、長くは取らない、あるいは取れない。サブプライム後はファンドマネージャーのサラリーマン化傾向が顕著だ。下手に長くリスク抱えて冒険するより、当面戴けるものは確実に戴いておくという傾向である。さらに、仮に長くリスク取る気があっても、組織がそれを許さない。サブプライム後の金融機関内部では、リスク管理部門の権限が強大化しているのだ。いまやCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の方が、CEOより態度がデカイ!

同時にマーケットの大局を見ると、トランプのババ抜きゲーム化している。この場合のババは、サブプライム住宅関連債券などの要注意リスク資産である。もはや余計なリスクを取りたがらない、あるいは取るにも取れない民間では持て余すので、ババをFRBが買い上げているわけだ。問題は、そのババを引き受けた公的部門が一体どうするつもりなのか。もはやババの次の引き手はいない。

このままではFRBは巨大ヘッジファンド化して、膨張したバランスシートが抱えるリスクは蓄積するばかりだ。そのFRBが発行したドル紙幣に対するマーケットの評価が、現在進行中のドル安の根源にある。

そして我がジャパンでは、公的部門の要職に居る人たちが、リスクを引き受けるどころか、マーケットの不安を煽り、民間のリスクを増大させるような発言を繰り返していることを本欄では書いてきた。今朝の日経社説「鳩山政権は市場の懸念に耳を澄ませ」も、財務相、金融相の言動にイエローカードを出している。

「中小企業向け融資返済猶予」の話にしても、サッカーのゲーム途中にルールを変え、ゴールポストの位置を移すようなことをしたら、東京市場が世界の中でますます奇異な目で見られ孤立するは必至。中小企業にしても、個々の融資案件を返済猶予してもらっても、全体では貸す側の金融機関の体力が落ち、中小企業向け貸し渋りが加速して、結局、「合成の誤謬」の最たる例になってしまう。庶民目線の政治という言葉の響きは心地良いが、政治が目先の庶民受けにばかり走ると、後でその政策の戦略の欠如から発する痛みを庶民全員が味わわされることになる。

「JAL再建」問題といい、ダム問題といい、ここにきてこれまでの「負の遺産」が一気に表面化してきた感もある。結局、英語で言えば、There is no free lunch(=タダ飯などあり得ない)。

ヒョッツとしてハトヤマ政権って、とんでもない貧乏クジ引いたのかも。サッカーで言えばオウンゴールを密かに待っているのが自民党の谷垣新総裁にも見えてくるのだが...。

さて、今日の読売新聞4面の書籍広告(小学館)に30分でわかるシリーズが載っています。
―ワンニャン幸せタッチケア
―お百姓のススメ
―宝くじ 大当たりの法則(女性セブン編集部編だと)
そして
―3000円から始める金投資
こういうトピックと同列になったのですね。隔世の感があります。

小学館と言えば、赤塚不二夫の漫画というドル箱も持っているところ。次は、おそ松くんに、金の説明でもやってもらおうかな。(笑)

2009年