豊島逸夫の手帖

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祝(?)ダウ10,000ドル回復

2009年10月15日

ダウ10,000ドル回復は象徴的な出来事であり、NY証券取引所のフロアーが待ち望んでいた瞬間でもあった。なんと、「DOW 10,000 AGAIN」という帽子やTシャツまで用意されてご祝儀に配られた。

たしかに心理的節目ゆえ、心理的効果は大きい。しかし、プロの目は冷静だ。米国経済チャンネル見ていても、"Stock rally likely to continue, but hedge your portfolio: Pros"=「プロのアドバイス:株高が続きそうだが、貴方のポートフォリオをヘッジすることも忘れずに」というような見出しが目立つ。

ウオール街がDOW10,000に湧くその時に、Main Street(普通の街中)では失業者が溢れている。GDPの7割を占める個人消費がどこまで回復できるのか...。

さらに、株に流入しているマネーの元を辿れば、そもそもFRBからばら撒かれたマネーで、つい先日にもバーナンキFRB議長が「ばら撒いたマネーは、いつか回収されねばならぬ」というようなニュアンスの発言をして、「利上げも視野に」と受け取られた一幕があったばかり。

結局、金融危機を脱出するために市中に振る舞われたドル札が、株、金、原油の各市場で踊りだしているわけだ。その中で米国債は売られているのが象徴的。米国債を大量発行して、FRBが買い取るというメカニズムでドル札がばら撒かれ、それがリスクマネーと化して、株価、金価格、原油価格を押し上げるという構造だからだ。このマネー大量供給のヤバさを一番危惧しているのが、他ならぬ米国債市場なのだろう。

こう考えてくると、ダウ10,000ドルで、とても安心はできない。だから、「(冒頭に戻って)プロは株安に備えてヘッジも忘れずにね」と言っているわけだ。

株安ヘッジと言えば、株のプットオプション購入などがまず思い浮かぶ。そして、金のようなリスク分散の手段も選択肢として考えられる。それゆえ、株も金も同時高となっているわけだ。

以前にも述べたが、いよいよ株に戻るが、また何が起こるか分からないから、100のうち90は株を買うにしても、10は金を買っておくという行動とも言えよう。

2009年