豊島逸夫の手帖

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不透明な金の『出口戦略』

2009年11月17日

昨晩のNY市場では二人の発言が注目された。

まず、バーナンキ。質疑応答で、資産バブルの可能性を問われ、その心配はないという答え。でも、足元では株も金も原油も同時高。これが資産バブルではないということは、株高、金高、原油高のトリプル高がFRB議長のお墨付きを得たということか。FRB公認の相場上昇とも言えるかもしれない。

もう一人は、本欄ではお馴染みのメレディス・ウイット二―女史。今や、ウオール街で最も売れっ子アナリストの一人である。昨晩、米国経済チャンネルに生出演して、I haven't been this bearish in a year.=この一年、株にここまで弱気になったことはない。という超弱気の発言。二番底は、と聞かれ、YES.
―消費が戻らないのは、クレジットカードで消費者が買い物をすることが益々困難になっているから。与信審査は厳しくなる一方で、消費者金融の収縮は大恐慌の時を凌ぐほど。
―一番怖いのは、ファニーメイやフレディーマック発行の住宅ローン債券が兆ドルの単位で膨れ上がり、買い手がつかないのでFRBが買い取っていること。いつまでもFRBが持ち続けるわけにもいかないのだが、民間に買い手が現れる兆しが見られない。サブプライム問題はまだ片付いていないのだ。商業用不動産が不安視されているが住宅用不動産のほうが危ない。
―銀行セクターはいまだに資本不足。追加的資本注入が、今後もさらに必要になる。

いやはや、相変わらずの厳しいご託宣だね。

さて、金価格は遂に1140ドルに。ドル安が要因と言われて久しいが、過去2カ月を振り返ると、円もユーロもドルに対して大して上昇していないのに 金価格が急騰している。

  9月14日 10月14日 11月16日
 ドル円 90.96 89.45 89.10
 ドルユーロ 1.46 1.49 1.49
 金価格 999 1062 1140

結局、外為市場の現象としてのドル安というより、投資家のドル不安という心理が金買いに駆りたてているのではないだろうか。あるいは、ドル不安というより、ドルもユーロも円も不安という通貨不信に拡大している証拠と言えなくもない。ドル、ユーロ、円の三通貨の弱さ比べが、かなりいい勝負なので、相対的には外為レートがさほど変わらない。全ての主要通貨を売りたい気持ちの人たちが通貨の原点回帰で金を買っているのかもしれない。

ウイット二―女史が、「どこに投資すべき?例えばゴールド?」と、バルティロモ・キャスターに水を向けられ、YESと大きく頷いていたが、株式アナリストのお薦めが金になった時代なのだね。

しかしながら気になるのが、金を大量に買い上げた投機筋の「出口戦略」。金市場は「入るは易し、出るは難し」。未曾有の規模に膨らんだ買いポジションを、どうやって売り抜ける「出口戦略」なのか。気になるところだ。

2009年