豊島逸夫の手帖

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雇用統計再悪化のサプライズ

2010年1月12日

毎度お騒がせの米雇用統計は、事前予想(新規雇用者数)プラスマイナス・ゼロに対して、蓋を開けてみればマイナス85,000人と大幅な悪化。3か月連続で事前予想と大きく異なるサプライズ。これだけブレが大きくなると、事前予想が反面教師というかreverse indicatorになるね。まぁ、事前予想と逆に出る傾向が一定していれば、それはそれでマーケットも読み易いということではあるが...。

とにかく、今回は、この数字で、利上げ観測は、吹っ飛んだ感じ。マーケットの反応も、「ヒョッとして利上げは6月にも」から、「やっぱり9月以降だわい」という方向にシフト。まだ、すくなくても9か月、さらには1年以上はゼロ金利に近い状況が続くと思えば、マーケットという賭場に出入りしている若旦那衆も、先週までは、もうこのへんで御開きにと思っていたのが、やっぱり、もっと長居して遊んでいきましょうか、ということになる。

外為はドル安ムードが復活。とはいっても、ユーロもソブリンリスクを抱え、今週のNY株式市場での決算発表次第では、欧州より米国の景気回復のほうが早いという観測が強まりそうな雰囲気でもあり、ユーロが売られ、その反対取引としてドルが買われる局面もあるだろう。従って、これまでのようにドル全面安とか一辺倒のドル安トレンドにはなりにくい。対円でも日銀による10兆円規模の新資金供給などで円短期金利が下がりやすく、民主党政権下での日本の財政規律に対する不安も収まらず、円安要因にも事欠かない。

要は、筆者が2年前から同じこと書いているが、ドル、ユーロ、円の弱さ比べの三つ巴構造は不変。

そして商品市場の反応は、米実態経済悪化=需要減退という売り要因と、ドル安復活という買い要因のせめぎ合い。

金は商品市場の中で最も金融商品に近いのでドル安の影響を強く受ける。さらに金は金利を生まないので利上げには、ことのほか神経質であり、その利上げ予測が遠のくと、下値不安が消え、買い安心感が強まる。すでに年初から急騰していたが、1100ドル超えの水準が追認され、さらに新規の買いで1150ドル台まで急伸中。

次の雇用統計までは買いのスタンス。ただし、来月発表の雇用統計次第では、またガラッと地合いが変わる可能性を頭に入れておく必要あり。

短期的には、毎月のようにクルクル変わるが、長期的には、仮に外為市場で相対的にドルが買われても、ドルに対する絶対的不安感が消えるわけではない。従って金の長期上昇トレンドは続く。ドル不安というより通貨不安というのがテーマ。

米の利上げ問題にしても、今年、仮に利上げに踏み切っても25べーシス(0.25%)x3=0.75%程度の話。絶対的な低金利水準には変わりなし。

読者の方からFFレートが2%を超えたらどうかとの質問があったが、その水準にまで引き上げる時の米国実態経済は、相当回復が顕著で、デフレ懸念から逆に金融超緩和政策の後遺症によるインフレ懸念さえ生じかねない状況のはず。消費者物価上昇率も鎮静化から上向きに転じよう。従って実質金利(名目金利から物価上昇を引いた数字)は低水準に留まると思われる。要は銀行預金しておいても目減りしかねない状況は続きそう。ただし、この実質金利が2%を超えるようなことになれば、金には相当な売り圧力がかかると思うよ。その場合とは、FRBが早め早めに出口戦略を実行し、インフレ予防策としての利上げ攻勢に踏み切るケースだけどね。米国経済を、やっと退院したばかりの患者に例えれば、いきなり実質金利2%もの厳しい外風に晒されて、果たしてぶり返さないか、という懸念が払しょくできず、ヘリコプター・ベンことバーナンキさんが、そこまで荒療治に踏み切れるものか。でも、ベンさんをインフレ・ファイターとして見れば金は売りでしょう。

今週のNY株は、earnings week(決算発表の週)だが、銀行株の不安材料が薄れ、一般企業業績でリストラ要因から本業収益動向への移行が焦点に。

債券市場では、雇用統計悪化で追加景気刺激策などに話が及ぶと米国債の更なる増発が懸念される。悪い金利上昇の懸念は消えず。

(さて、筆者の3連休は、遊びに超大忙し。)
まずスキー。暖冬予測が雇用統計以上に逆に出て、ガーラ湯沢は3メートルの新雪、大雪。ゲレンデ状態最高。9日、10日と朝6時の上越新幹線で日帰りスキーを満喫。10日は 東京駅で東海道新幹線に乗り換え京都へ。祇園の行きつけの小料理屋さんで、これも1月恒例の大根料理を味わう。寒さが厳しくなればなるほどダイコンは甘くなる。大将独特の薄味の煮込みが最高。これだけのために京都に来る価値ありと思うのだ。そして11日は北近江(長浜)で恒例の鴨鍋。今年の発見はセリの微妙な変化。予め予約しておいた分のセリはサランラップに覆われて出てきた。そして、お代わりに頼んだセリを待つこと30分。これが、全くの別物と思えるくらいシャキシャキ感が違う!野菜は鮮度が命とは言うけど、ここまで違うものか。さらに、セリをお代わりと言ったら、他のお客さんの分がなくなるからと丁重にお断りされました。あとは、16名3テーブルの間でセリの奪い合い(笑)。各テーブルの担当鍋奉行は、持ち前の大皿死守に必死。トイレゆきに席も外せず。ワイワイガヤガヤの宴の後、帰りの新幹線は全員爆睡。気が付いたら品川でした。

2010年