豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 脳梗塞の事前発見検査方法があるよ
Page805

脳梗塞の事前発見検査方法があるよ

2010年1月20日

首題の話は最後にして、まずは米国経済について。

昨年本欄で、オバマのハネムーン期間が終わり、これから国民の痛みを伴う厳しい(tough)政策決断(例えば増税とか歳出カットなど)をせねばならぬ、と書いた。しかし、その後のオバマの言動を見るに、その厳しい決断を先送りし続けているように思える。最大の目玉、医療改革にしても、米国民全員に等しく医療福祉を、という掛け声ばかり。米国財政が破たんしかねないほどの財政赤字が生じることについての対応には、ほとんど触れていない。

彼ほどのカリスマがあればこそ、国民に対し、断固とした態度で、私についてこい!と言えるのではなかったかな、と思う。国民に等しく医療福祉を与えるには、カネがかかる。その負担も皆で担ってゆこう、と訴えることが出来たのでは、と思うのだ。

しかし、そうこうするうちに、実体経済は悪化して就任以来、失業は増えるばかり。国民の心は離れてゆく。支持率は直近でついにブッシュ、クリントンをも下回ってきた。世論調査でも「米国経済が軌道に乗っていない」と答える人の割合を見ると、昨年4月の42%から先月には55%まで増えている。さらに、昨年失職したか長期失業状態に置かれたと回答したひとが31%に達する。

景気回復期待を囃し、昨年のNY株価は3月の安値から6割以上急騰した。そこで、兆円単位のボーナスが支給されるウオール街と、失業者が溢れる街角の景況感にはかなりの開きがあるのだ。その咎がオバマに向けられている。

そこで民衆の怒りを和らげるために、金融機関に対する懲罰的課税などの措置を打ち出しているが、肝心の財政赤字に対する戦略的対応が全く見えない状況だ。結局、ノーベル平和賞は貰えたオバマはチャリティー運動のリーダーにはなれるが、未曾有の経済苦境から脱出するという「海図なき航海」を国民と共に乗り切るキャプテンにはなりきれないのでは、という不安感がマーケットにも強まってきた。

外交的には、イラン、中国などには歩み寄りの姿勢を見せるが、日本や英国などのモノを言える盟友国には厳しい態度を貫くというのがオバマ流に見える。(直近では、イランへの制裁強化案やダライラマとの会見予定など、外交姿勢に変化の兆しは見られるが...。)

時あたかも、昨晩はケネディー議員死去に伴う上院補欠選挙があり、共和党勝利が伝えられている。こうなると目玉の医療改革の行方も混とんとしてきたようだ。オバマの2年目は波乱含みで始まった。11月の中間選挙も控え、本当に試練の年になると思う。

マーケットへの影響としては、オバマの支持率が下がれば下がるほど、利上げなど痛みを伴う出口戦略発動のタイミングは遅れるのではないかな。冷静に見れば、未曾有の規模の財政出動や超金利緩和のおかげで、米国経済が最悪の危機的状態からは改善傾向が見られることは確か。そこはオバマが評価されてもいいはずなのだが、マーケットのセンチメント(ムード)は彼に冷たいね。政治も相場も理屈だけでは割り切れないことを改めて痛感する。

さて、国内経済ニュースはJAL破たん一色だね。筆者の知り合いでも昨年12月にJAL株を買った人がいて、ブツブツ言っている。新政権はJALを破綻させないって言ったのにとか、マイレージは保護されるのに株主は何故保護されないとか。まだまだ株投資の意味を分かっていないなと、呆れてしまったけど。

テレビニュースでは、出入り業者が曰く「良い時代には、見積もりがすんなり通ったのに...」。正に、それが問題だったのだよね。ちなみに筆者は青組(=ANA。JALは赤組)。最近は出張でもANAに満席が多いと感じる。

最後に、昨晩は丸の内の銀行倶楽部で講演。某メガバンク主催なのだが、投資セミナーではない。ベンチャーの社長さんたち100名ほどが集まる会。なんでそういう席で金の講演かという感じだが、こういう投資セミナーとは異なる席が増えてきた。小学館から30分で分かるシリーズで金の入門書を出版したときも、にゃんにゃんペットケアとかガーデニング入門と同じシリーズで、なんで金が入るのかと思ったけど。

金相場は上がるか下がるかというようなナマナマしい話は抜きで、講演後の親睦会でもベンチャーで成功した社長さんたち(若手もいる)と話していると、「虚業」に身を置いてきた筆者には、とても興味深い「実業」のことばかり。すっかり時間の経つのも忘れるほど。日本経済再生の可能性を肌で感じた。「アカデミックな学会とビジネスの世界とが、タコ壺から出て一緒に働くこと」という言葉がとくに響いたなぁ。

個人的には、スギ花粉症の根本的治療のための経口ワクチンと舌下療法剤の開発とか、脳梗塞バイオマーカーの開発とその臨床応用というテーマにひかれた。脳梗塞を血液検査で早期発見できる可能性については初めて知った。ファースト・スクリーニングの段階で7割近くをキャッチできれば、かなりの効果だよね。千葉県内の7か所で人間ドックのメニューとして選択できるらしい。筆者も出張って検査してみるつもり。なんせ、父が脳梗塞で死んでいるから。

2010年