豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. ドッド金融規制案の行方
Page832

ドッド金融規制案の行方

2010年3月16日

米議会の関心は医療保険から金融規制に移りつつある。医療保険に関しては国民の意見が大きく割れたが、大銀行の規制案は選挙民の理解を得やすい。

曰く「そもそもtoo big to fail=大きすぎて潰せないほどの金融機関を野放しにしたから、リーマンショックが起きても有効な打つ術がなかったのだ。挙げ句の果ては、公的資金で救済して、ウオール街の高額ボーナスが復活。でも街角の国民の生活は一向に良くならないではないか。」

金融規制案の中心的存在ドッド議員の昨晩の発言である。しかし、実際出てきた案は、民主党と共和党の妥協の産物。精神論ばかりで具体性に欠く。FRB傘下に消費者保護機関の設立、財務省傘下に金融システミックリスク監視機関の設立、金融機関のハイリスク取引規制などが骨子。

話題のボルカ―ルールに関しては、金融機関の自己勘定部門の規制、ヘッジファンド出資への規制などがblueprint計画として描かれるが具体的には行政サイドに権限を譲渡するという内容。

ドッド議員は先週「金融規制案を来週月曜日に提出」と発言してマーケットを騒がせたが、今週になってみると「まだ議論の時間はたっぷりある」とトーンダウンした。

なお、商品市場に対する規制案は、別の次元の問題である。CFTCが公聴会を開き4月26日を目途にポジション規制などが検討されている。ここでの立法趣旨は、「原油穀物価格が商品先物投機で乱高下することで庶民の生活が脅かされる」という問題に起因している。

さて、今週はFOMCであるが、それより筆者が気になるのは、いよいよFRBによるエージェンシー債購入が今月末で打ち切りの期限を迎えること。なんせ110兆円相当も買い取ってバランスシートに載せたままなのだから。でも、あくまで有事対応の緊急手術措置。いよいよ手術後の患者のカラダから点滴を抜く時期が来た。

果たして大丈夫? ファニーメイやフレディマックのMBSを民間の誰がまとまって買ってくれるの? 大量のエージェンシー債を抱えた民間金融機関が 米国債格下げなどで利回りが上昇した場合はどうなるの? そもそもファニーメイやフレディマックの政府系住宅金融公社の存在は、今後どうなるの?

点滴を外されると、肝心の不動産価格が二番底を打つ可能性も無視できず。今でこそマーケットの目はユーロのソブリンリスクばかりに集中しているが、米国の不動産市場も債券市場も、依然、かなり不安要素を抱えたまま。ユーロ安だから米ドルに避難するという駆け込み寺的発想では、その場しのぎに過ぎず。駆け込んだお寺が火事になることだってあるのだ。唯一、米国債市場は抜群の流動性があるから、池に譬えれば、その中で泳ぐ魚が干上がるリスク(流動性リスク)は非常に低いけどね。だからといって安全資産とか安全通貨ということにはならない。

最後に、昨日朝、気まぐれで始めたツイッタ―。全くの初心者が見よう見まねでアカウントをオープンして呟き始めたものの、呟き返しをどこで読めばよいのかさえも分からず。夜あれこれ操作してみてやっと分かったような次第。筆者周辺でもツイッタ―となると話題にはなっているものの、実際にやっている人達の出現率は、まだかなり低いね。まぁ、ぼちぼち やります。Jefftoshimaで検索してみてください。昨日は3回呟いてみましたけど。

今後、NY時間帯の異変とかマーケットの急変とかには、ツイッタ―で迅速に対応できるでしょう。

2010年