豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 米銀がFRBから乳離れするとき
Page833

米銀がFRBから乳離れするとき

2010年3月17日

FOMCはサプライズ無し。Exceptionally low interest rate=超低金利が、for an extend period=長期間継続との声明文文言も変わらず。(twitterは こういうとき便利で、日本時間朝3時15分の発表時に呟けたけど。皆寝ているとは思ったけどね。まぁ、相場急変時には使える媒体だと思った)。

昨日本欄でも述べたように、マーケットが一番関心持っていたことはFRBによるMBS買い取りプログラムが今月末に終了すること。ヒョッとすると今回のFOMCでその延長もありかな、という観測もあった。でも、予定通り終了とのこと。

さぁ、それで、どうなる。問題は米国の銀行ビジネスモデルが崩れたことだ。

リーマンショック以前は、銀行が低金利の住宅ローンを顧客に設定して、その住宅ローン債権を証券化することで利益を得ることが出来た。だからこそ米国の住宅金融市場もスムーズに廻っていた。

ところが、その証券化商品が破たんして、その市場も凍りついてしまった。そこで、銀行のビジネスモデルも変わった。まずFRBがタダ同然でいくらでもカネは貸してくれる(超金融緩和政策)。一方で、MBSを購入すれば、結構な金利収入が得られる。しかもMBSをFRBはいつでも買い取ってくれるから、流動性リスクもカウンターパーティーリスクも無い。

そこで市中の銀行としては、FRBからタダ同然のカネを借りまくってMBSで運用するというビジネスモデルが成立したわけだ。

ところが、今月末をもって、米銀はこの収益構造をアテに出来なくなった。自分のリスクでMBSを購入せねばならぬ。FRBから乳離れの時期を迎えたわけだ。こう考えてくると、米国住宅金融市場は、これからかなりの試練を経ることになりそうだね。

なお、金価格は、FOMC発表時間前からテクニカル要因で上げていたけど、声明発表後も、低金利継続ということで高値圏を維持した。結局、今回も下がりそうで、下がらなかったね。ギリシア財政危機も陳腐化してユーロ売り ドル買いの波も一巡したようだし。

やはり注目点は、中国インドの新興国経済。中国のインフレ懸念はインフレヘッジとしての金買いを加速させる可能性もある。今月末にまた北京に4日間ほど行くので、現地でその実態をつぶさにみてくるつもり。

2010年