豊島逸夫の手帖

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スパゲッティ・スワップ

2010年3月23日

ツイッタ―のほうでは先週金曜夜に書いたが、インドの抜き打ち利上げで 金プラチナともに急落。Will Fed be the next?(次はFRBか?)という観測も流れ、金プラチナ急落。昨晩NY(月曜)も続落。NY株も下落したが、昨日は医療改革法案可決の報で医療関連株が買われたことで戻した。3200万人の新たな医療保険加入により新規顧客が見込まれるということかね。ファイザーなどのブランド薬かジェネリックかで銘柄選択は分かれているが。NY株全体の流れとしては、足元、やけに割高な感じで、本欄ではお馴染みの相場格言Sell in May and go away(5月に売ってずらかろう)の展開になりそうな様相。

さて、金価格については、対ユーロでのドル高が効いているね。依然ギリシア関連でユーロは売られがち。加えて足元ではFRBの利上げ観測でドルは買われがち。筆者の見方は変わらず。FRB利上げは早くても今年秋。さらにずれこむことも。

仮に利上げに踏み切ったとしても、ここが大事なことだが、せいぜい0.25%ずつ3-4回でしょ。ゼロ金利が1%程度になるだけの話。歴史的低金利水準に変わりなし。例えば3%になど上げてしまったら、それこそ不動産市場が二番底になるは必定。出来るわけない。

次の話題は、金融規制法案だけど、昨晩もガイトナーが規制の必要を熱く語っていたけど、最近は彼の評価が下がり、存在もすっかり薄くなってしまった。若手の旗頭も、長老のボルカ―に主役の座を持って行かれたね。ドッド法案も結局は、民主、共和党の政治的妥協で骨抜きになりそう。

さて、金曜日のツイッターは、「大学法人の資産運用」についてのエピソードで大いに盛り上がったが、欧州ではイタリアの地方公共団体のデリバティブ損失が話題になっている。エピソードとしては、イタリアの人口2800人の村の財政担当が3億円ほどのデリバティブを手仕舞うか否かで悩んでいる。すでに多額の含み損をかかえ、このままでは学校や教会への電力供給が停止される事態に。ついには、この取引を売りこんだ銀行に対して訴訟を起こした。さらにミラノ市でも、同様の話が。メリルリンチ、UBS、ドイツ銀行、JPモルガンなどが訴訟を起こされている。

イタリア全体では、2001年から2008年の間に525の地上公共団体が、4兆円相当のデリバティブ契約を締結。これは、彼らの総債務の1/3に当たるという規模だ。

そのデリバティブとは金利スワップ。30年の固定金利の長期債発行で資金調達したが、起債後の金融緩和、金利下落局面で変動金利にスワップして、乗り換えた。ところが、金利が反転して上昇。思わぬ含み損を抱えてしまった次第。日本の大学法人も、イタリアの地方公共団体も、口を揃えて「こんなはずじゃなかった。セールスにきた投資銀行の話と違う。」なお、業界では スパゲッティ・スワップと揶揄されているそうな。

実は、この手の話は世界中にゴロゴロころがっている。米国アラバマ州ジェファーソン郡。カリフォルニア州オレンジ郡。ノルウェーの地方都市。古くは英国ロンドン近郊の町、等々。

最後に、週末発売になった日経マネーの筆者連載コラムでは、ポールソンの保有銘柄推移とか、ギリシアCDSの話などを取り上げました。雑誌の原稿は魚の目。著作は鳥の目。ツイッタ―は虫の目。ブログは魚と虫の両方の目というところかな。

本欄読者のツイッタ―加入率は未だ低いようだけど、この際、自分で登録してみたら?
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パスワードなど決めて入力すれば数分で出来るよ。筆者の呟きは、jefftoshima で、ツイッタ―を検索すれば出ます。相場急変時の速報コメントとか、個人的趣味の話(愛猫モモの介護など)とか、一昨日の春の嵐の早朝にはスキーに行きそびれた筆者と、マラソン大会が中止になったブルース池水との嘆きの会話とか、臨機応変に使えるのがこの媒体の面白さと、始めて1週間で分ってきたところ。

2010年