豊島逸夫の手帖

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ユーロから金へ

2010年4月8日

〈ギリシア財政危機→ユーロ売り→ドル高→金売り〉が、〈ユーロ売り→ソブリンリスク→信用リスクヘッジの金買い〉へと流れが変わってきた。潮目が変わったので、空売りに走った投機筋が一斉に買い手仕舞っている。

振り返ってみれば、米ドルに不安を抱いてユーロに駆け込んだものの、その駆け込み寺が火事になってしまった。金なら火事でも大丈夫と駆け込んでくるが、なんせ寺の規模は小さい。小寺である。プラチナに至っては、そのまた1/20程度の規模だ。グローバルなマネーの受け皿としては、米ドルに匹敵する規模を持つ通貨はない。米ドル以外に国際基軸通貨の候補は見当たらない。人民元が自由化すればFXの世界では人気通貨となろうが、政治有事リスクを常に孕むので基軸通貨の要件を満たさない。

ただ、米ドルを6割も7割もポートフォリオに持ち続けるのは、いかにも偏っている。通貨リアロケーションで米ドルシェアを5割程度まで減らす動きが長期的に進行するというシナリオが最も現実的と思う。

なお、金価格上昇の後講釈として、しきりに投資家のリスク回避が薄れたためと言われるが、これはピンとこない。マーケットの不安感が薄れると、リスク資産としての金買い意欲も強まる、と言ったかと思えば、リスク回避の必要性が薄れるので安全性を求める金買いは後退とか言われることもあり、都合よく解釈に利用されている。

正しくは、投資家のリスク分散意識が高まり金買い、であろう。

2010年