豊島逸夫の手帖

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流動性とソルベンシ―

2010年5月25日

NY株式は引け際15分でストンとダウ80ドル急落した。最近、こういうエアポケットみたいな唐突な下げが頻発している。市場の流動性が減少している兆候である。昨晩の場合は、スペイン中央銀行が民間銀行を管理下に置いたという報道が信用不安を連想させたことが材料。疑心暗鬼に取りつかれた銀行間資金市場の流動性も減少している。

その背景にある金融規制不安の問題だが、米国の規制案は、案の定妥協に次ぐ妥協で、かなり中味が薄まったので、銀行側は内心ホッとしている。自己勘定取引とファンド出資への制限も「監視」程度で済みそう。デリバティブ売買は相対のOTCから取引所経由が主体になる。銀行にとっての旨味は減る(20%程度の減益になる)が、まぁ頑張ればなんとかなる範囲に落ち着いた。(ちなみに銀行に旨味があるということは 個人投資家がむしられてきたということでもあるのだよ。)

流動性(liquidity)の問題についてだが、ソルベンシ―(solvency)=債務超過になるかならないかの問題と弁別する必要がある。流動性危機の段階では、株、商品など売れるものから売られやすい。(売りたくても売れないことが問題だから。)

これが、より根源的な債務超過に進行してしまうと(insolvency)、破たんリスクが顕在化して、誰の債務でもない金が買われることになる。

その金価格は、底堅い動きで1190ドルまで戻してきた。ただ、こうなると1200の壁が厚く感じられる。プラチナも1530ドルまでは戻したが、以前のような力強い戻しは見られない。おっかなびっくり。

外為市場では、ユーロのショートカバー(空売り買い戻し)が一巡したところで、ショートカバーラリーが終わり、新たな第何波かのユーロ売り攻勢が始まった。

人民元動向も注目されるが、北京の米中経済戦略会議で直ぐに解決される話でもない。中国にしてみれば、すでにユーロ安でお得意先の対欧州貿易の競争力が削がれているので、今の時点で自ら人民元を切り上げることなど出来ようはずもない。米中牽制球会議と化している。それにしてもクリントンおばさま。檀上でコキントウにひけをとらない貫禄だね。ガイトナー君が貧相に見える。

さて、今週の筆者は、欧州経済のアラ探しばかりではなく、米国経済のアラにも注目している。住宅問題のアラは、いまだに800万人も住宅ローンを返済出来ない人達がいること。売るに売れず、払うに払えず、最悪、差し押さえになる。そうしている間にも不動産価格は下がり続ける。とくにカリフォルニア州に半分近く集中している。政府も条件付きで救済案を提示しているのだが。この家計部門の累積債務問題が解決されないと、まだ安心できない。

なお、朝鮮半島の緊張は引き続き要フォロー。偶発的な接触が思わぬ結果を生むことがある。欧州、米国、中国、そして朝鮮半島。複眼で目配りしないと追い切れない。

付け足し。
外為市場の円高、ウオン急落とは裏腹に、昨晩の日韓サッカーは情けなかった。はっきり言って、メジャーリーグとマイナーリーグの差が歴然。韓国はプレミアで鍛えられた連中が多いし。焼き肉キムチ肉食パワーと 納豆味噌汁草食パワーの違いなのかな。兵役の有無も関係あるかも。ガンバレ日本の精神論だけでは変わらない感じがした。

2010年